抄録
【はじめに】患者指導は、理学療法を円滑かつ効果的に施行する上で重要な位置を占めている。なかでも患者と治療者の関係は、患者指導に欠くことができない最も大切な要素である。身体機能と心理的側面は大きく関与しており、心身両面を考慮した指導がなされるべきである。しかしながら、理学療法の現場では指導や面接技術について特別に教育されたわけではなく、患者への適切な配慮がなされているかどうかは疑問である。そこで今回、健常者を対象に、課題指導時の不安と課題遂行能力との関係を調査し、患者の心理的側面を考慮した患者指導の有用性を検討することを目的とした。【対象と方法】対象は、健常者28名(男性11名、女性17名;平均年齢63.7±4.2歳)。被検者をA、Bの2群に分類し、課題に対しA群(n=14)では適切な指導と対応を、B群(n=14)では不適切な指導と対応を行った。指導は同一項目のプラスとマイナス要素を対比させ、課題指導内容は両群同様に7項目設定した。検討項目は、不安点数(指導介入前後の比較、男女比較)、課題遂行項目数(両群の比較、男女比較)、アンケート結果によるストレス感受性の男女比較、指導内容に焦点をあて、自由に回答を求める重点的質問法での両群の比較とした。【結果】不安は、A群では指導介入前後、男女間で有意差が認められたが(P<0.05)、B群では認められなかった。指導介入前後の両群女性での比較は、A群の不安は降下、B群では上昇を示し有意差を認めたが、男性では認められなかった(P<0.05)。両群の課題遂行項目数の比較で、A群の可能項目数は有意に高値を示した(P<0.05)。女性の比較においてもA群は同様の結果を示したが、男性では有意差は認められなかった。アンケートでは、女性は男性に比べストレスを受けやすいという結果が認められた(P<0.05)。重点的質問法では、A群は11/14人がわかりやすかった等のポジティブ反応を、B群では9/14人が不快だった等のネガティブ反応を示した。両群の比較では、A群ではポジティブ反応が、B群ではネガティブ反応が有意に高い結果を示した(P<0.05)。ネガティブ反応では、多くの被験者が指導者の自己紹介省略に不快感を抱く結果となった。【考察】指導や対応方法により、不安は即座に変動することが分かった。特に女性は男性に比べて不安を感じる傾向が強く、ストレスに影響されやすいことから、指導や対応には細やかな配慮が必要であると考えられた。自己紹介省略よる初対面での指導者の対応は、被験者にネガティブな印象を形成させ、さらに不適切な対応が重なることで被験者の不信感を募らせ、課題集中困難を招いたものといえる。つまり、理学療法士は第一印象の重要性を再認識し、適切な指導及び面接技術を身に付ける必要性があると考える。