抄録
【はじめに】近年、医療情報の開示が進められ、またチーム医療の展開の為に情報の共有が求められている。リハビリテーションサービスの効果的な提供の為にも、対象者から得られた種々の情報を共有することは非常に重要である。その一方で、医療従事者は、職務上知り得た秘密を守る義務も有している。そこで今回、臨床実習において対象者に関する情報に触れることがある理学療法士養成課程の学生に対して守秘義務に関するアンケート調査を実施し、その認識状態について検討したので報告する。【対象と方法】本校の理学療法士養成課程に在籍する学生210名(男性144名、女性66名、平均年齢25.1±6.3歳)を対象とした。対象者に質問紙を配布し、自記式によるアンケート調査とした。調査項目は年齢、性別、職歴(職務年数、医療福祉施設での経験の有無)を一般的属性として尋ねた。守秘義務に関する項目として、守秘義務違反の罰則に対する認識、臨床場面でよく見られる14項目(メモの管理に関する7項目、患者情報についての言動に関する7項目)を提示し、それぞれにおいて守秘義務違反に該当すると思うか否かをその理由とともに尋ねた。【結果】罰則を知っているとした学生は7名のみで、その重さについては妥当又は軽いとしていた。一方、知らないと回答した203名が妥当だと想定した罰則の重さは、懲役では平均2.0年(0年から10年)、罰金は平均130.8万円(0円から5000万円)であった。次に守秘義務違反に該当するか否かについてでは、以下の項目で意見が分かれた。メモの管理に関しては、「実名を記入した」(違反42名、許容147名)、「スタッフルームの机の上に置いたまま席をはずした」(違反131名、許容77名)、「家に持ち帰った」(違反45名、許容163名)、「帰りの電車で内容を見返した」(違反139名、許容71名)であり、患者情報についての言動に関しては、「他職場に勤める知り合いの理学療法士と電話で実名を挙げて会話した」(違反110名、許容96名)であった。【考察】守秘義務違反に対する罰則の規定を把握している学生は殆どいないが、妥当と考える罰則は実際の規定よりも重く捉えている者が多く、理学療法士として守秘義務の重要性を認識している学生が多いことが示唆された。しかしながら、患者情報を記入したメモの管理については意見が分かれており、他者の目に触れる可能性が高い「電車内での見返し」では約4割の学生が、更に「家への持ち帰り」について約8割の学生が違反と考えていない。このことから、臨床実習に先駆けて「メモの見返しの場面での問題」から「実習後の処分方法」に至るまでの十二分な指導の必要性が示唆された。また、実名を挙げることについては、同施設の医療スタッフとの間での情報共有に関してのみ許されるという認識が強く現れている一方で、約半数の学生が「知り合いとの会話場面」でも違反にならないと考えており、守秘義務について概念的な説明だけでなく、より具体的な行為や状況についても教育する必要性が示唆された。