抄録
【はじめに】平成4年度から10年間当学院で行っている臨床体験実習の目的は,1学年のうちに実際の医療現場を体験することで職業意識を養い,また,臨床場面を心象しながら学習することにより,学内教育を効果的に進めるということである。これまでの臨床体験で指摘されたことは,看護部門で実際の医療現場を見学させることは理学療法士と看護師という部門の違いから,どの程度まで見学や体験をさせてもよいのかということであった。このため今年度から指導する看護師と学生が見学・体験した内容を共に確認できるよう「臨床体験チェックリスト」を作成した。第32回本学会で臨床体験の成果について,学習目標は達成されたと報告した。本研究はその後の臨床体験の成果を確認し,さらに内容について検討することを目的とした。【対象と方法】1.平成14年度(以下H14と略す)昼間部1学年32名を対象に「臨床体験チェックリスト」をもとに体験・見学した内容を調査し,各項目ごとに体験率を算出した。2.同学生を対象に臨床体験の学習目標4項目について10段階の評定尺度を用いて調査し,平成9年度(以下H9と略す)に臨床体験を実施した昼間部1学年31名の結果と比較した。3.1学年で臨床体験,2学年でいわゆる検査実習を終了したH14昼間部2学年34名を対象に7つの調査項目について10段階の評定尺度を用いて調査し,H9昼間部2学年28名の結果と比較した。【結果と考察】1.H9で体験・見学できた内容はH14も同様に行われていた。H9と比較してH14で体験率の高かった項目は,「感染防止手洗い」「食事摂取量の観察」「転落・転倒などの事故防止」などであった。「臨床体験チェックリスト」を用いたことで,感染防止や事故防止などに関するより具体的な体験項目が抽出された。また,「臨床体験チェックリスト」について実際に指導をした看護師からは「短期間でいろいろな場面を見学・体験をさせることができた」などの意見が多かったことから効率的に臨床体験を行うことができたと考えられる。2.臨床体験の学習目標4項目の評定尺度はH9とH14に差がみられなかったことから,学習目標の達成度は高い状態で維持されていたと考えられる。3.昼間部2学年のH9とH14の比較では7項目のうち2項目について差がみられた。差がみられた項目のうち,「患者の入院生活をイメージする」はH14が高く,「職業意識に影響を受けたか」はH14がわずかに低いという結果であったが,これらはクラス特性の違い,2学年時までの学習態度などによっても受け取り方が変動し得る項目であると思われた。臨床実習では患者と1対1の関係作りが重要であるが,その準備として患者との関係作りを体験させる場をできるだけ多く与えることが,臨床実習で学習の達成度を高めるためにも必要であると考えている。「患者の対応に役立ったか」の評定最頻値は10であったことから,臨床実習前に看護部門で臨床体験をさせることの成果を確認することができた。