理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: SO509
会議情報

産業・労務管理
体幹前屈時の可動性と筋活動の関係
*仲井 宏史古川 公宣岡村 秀人寺倉 篤司後藤 敦司岸 和子下野 俊哉
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに】下肢伸展・体幹前屈位での重量物保持においては,腰部筋の発生する張力以外に腰背腱膜や脊柱の靭帯等を含んだ後部靭帯系の作用が報告されている.今回我々は,個体の持つ組織の伸長性が体幹前屈時の筋活動にどのような影響を及ぼすかに注目し,若干の知見を得たので報告する.
【対象と方法】対象は腰痛症の既往のない健常男性10名とした(平均年齢27.8±3.0歳,平均身長170.9±7.0cm,平均体重71.7±11.0kg).前屈角度(肩峰と大転子を通る線が垂直線となす角)を30°,45°,60°,75°,90°および最大前屈位とし,これらの姿勢で0,10kgの重量物を5秒間保持する間の腰部筋及びハムストリングスの筋活動を表面筋電計(Noraxon社製MyoSystem1200)を使用して計測し,連続して安定した3秒間の筋活動の値を最大筋力の値で除し標準化して用いた.この姿勢に関与する柔軟性の指標として,腰部はSchoberらの方法に準じて伸長率を,股関節はSLRを計測し解析に用いた。統計学的処理にはt検定および分散分析を用い有意水準を5%以下とした.
【結果】体幹前屈角度に対する活動量の変化をみると,腰部筋は30°から60°までは大きな変化がみられなかったが,75°から最大前屈位では前屈角度が大きいほど負荷量にかかわらず有意に低値を示し(p<0.01),ハムストリングスはほぼ一定の活動を示した.腰部筋の活動量は負荷量の増加に対して, 30,45°で有意に増加したが(p<0.01),それ以降に有意な関係はみられず,ハムストリングスは全ての角度で有意に増加した(p<0.01).伸長率と腰部筋の活動量との関係では,30°から60°では伸長率が大きいほど活動量が低い傾向がみられたが有意差はなかった.しかし75°,90°ではこの傾向とは逆に伸長率が大きいほど活動量が有意に高値を示し(75°:p=0.06,90°:p<0.05),最大屈曲位では有意差がなかった.また伸長率とハムストリングスの活動量およびSLRと腰部筋またはハムストリングスの活動量との間には有意差はみられなかった。
【考察】後部靱帯系は腰背腱膜,椎間関節包や椎間板後方線維輪,棘間,棘状靱帯等を指し,これらの組織は体幹前屈角度が大きくなると伸長を受け張力を発生する.本研究において,60°までとそれ以降で腰部筋の活動量と伸長率の関係が大きく変化したことは,個体の持つ伸長性の要因がこの角度を境に関与することを示唆していると思われた.しかし,この姿勢に関与する因子は他にも多く存在するため,今後はその他の交絡因子も考慮しさらに研究を進める必要性があると感じた.
著者関連情報
© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top