抄録
[目的]我々は実践型健康づくり事業において中高年者の運動指導を担当した。今回参加者の運動実践前後の体力変化に着目し、中高年の健康増進に関する若干の知見を得たので報告する。[対象と方法]豊橋市で募集した実践型健康づくり事業に参加を希望し、事前のメディカルチェックにて参加可能と判断され、継続参加した29名を対象とした。参加者の体力を評価するために、心肺運動負荷試験(以下CPX)で計測した予測最大酸素摂取量(または最高酸素摂取量)について検討した。目標心拍数は予測最大心拍数の85%に設定した。CPXで運動実践前、実践後ともに目標心拍数に達しなかった群をグループA、実践前は目標心拍数に達しなかったが、実践後に達した群をグループB、実践前は目標心拍数に達したが、実践後に達しなかった群をグループC、実践前,実践後ともに目標心拍数に達した群をグループDとした。運動実践は当施設において週1回、嫌気性代謝閾値時の運動強度でペダリングを20分間行った。また自宅においても本事業を除き、少なくとも週2回20分から30分の有酸素運動を行うように指導した。運動実践期間は3ヶ月間であった。平均歩行量は運動実践期間の前後で万歩計を用い調査した。統計処理には対応のあるt検定を用い、有意水準を5%未満とした。[結果] CPXにおいて、グループA(6名)は運動実践前後で最高酸素摂取量が20.2±5.7ml/min/kgから26.2±5.2ml/min/kgへと有意に増加した(p<0.01)。グループB(5名)は運動実践前、下肢疲労感及び血圧の上昇により心肺運動負荷試験を終了したが、運動実践後それらの症状は見られなかった。CPX終了時の酸素摂取量は運動実践前が24.3±4.1ml/min/kg、運動実践後が28.5±6.9ml/min/kgであった。グループC(2名)は上室性期外収縮の多発により運動実践後のCPXを途中終了とした。CPX終了時の酸素摂取量は運動実践前が24.3±0.3ml/min/kg、運動実践後が22.6±1.8ml/min/kgであった。グループD(16名)は予測最大酸素摂取量が20.3±8.5 ml/min/kgから25.0±7.3 ml/min/kgへと有意に増加した(p<0.01)。歩行量は全てのグループにおいて、有意な変化は認められなかった。平均歩行量は運動実践前が8472歩、運動実践後が8381歩であった。[考察とまとめ]実践型健康づくり事業によりグループAは最高酸素摂取量が有意に増加した。グループBは亜最大負荷時の自覚症状と血圧の著明な上昇が改善した。グループCは事前のメディカルチェックで許可が出た人々に対しても、医学的にリスク管理を行う必要があると示唆された。グループDにおいて、池上らの評価表(5段階)で1)低い2)やや低いに分類された10名のうち9名は、実践型健康づくり事業により体力判定が1ランク以上向上した。以上より本事業は特に低体力者に対して有効であると示唆された。