抄録
【はじめに】 近年、従来からの歩行を中心とした有酸素運動が一定時間実施出来ない有疾患患者、低体力者、高齢者向けの運動として座位エクササイズが注目されている。この座位エクササイズは、京都大学医学部第2内科では「すわろビクス」、その他フィットネス関係でも「チェアエクササイズ」として多くの方法が紹介されている。しかし、これらの運動強度に関して具体的に検討した報告は少ない。 本報告の目的は、座位エクササイズの特性と運動効果について検討し、有疾患患者や低体力者へ用いる際の一助を得ることである。【対象と方法】 対象は、健常男女20名ずつ計40名とした。各々の平均年齢は26.3歳、21.0歳、平均体重は63.0kg、52.7kg、平均BMIは20.5、21.9であった。 方法は、椅子座位において1)拍手、2)ニーアップ(下肢のみの交互挙上運動)、3)ウォーキング(交互ニーアップと対側上肢でのニータッチ)の3条件とした。運動頻度は70Hzとし、充分な安静の後3分間連続して行った。測定機器は、フクダ電子製IS6000を用いて15秒毎の酸素摂取量を測定した。各々の測定間には、充分な休息を入れた。 検討項目は、各々の条件下でのMETs数と脈拍数、主観的運動強度(RPE)とし、Student t-検定を用い有意水準を危険率5%未満で検討した。【結果と考察】 各々のMETs数は、男性で1)1.22、2)1.88、3)2.90であり、同様に女性では1)1.12、2)1.68、3)2.84と、2),3)の条件では安静時に比べ有意な増加を示した。 またRPEは、男性で1)7-10、2)9-13、3)11-15、女性で1)7-11、2)9-13、3)13-17と、実際の酸素摂取量に比べて高くなっていた。 以上の結果より、今回検討した座位エクササイズは、2から3METs程度の負荷量で、BruceのプロトコールでもStageIでは4.8METsであることから、運動負荷としては低強度である事が示された。また、米国スポーツ医学協会勧告では、有疾患患者のはじめの運動負荷量は、3METsを超えてはならないとされていることより、今回の座位エクササイズは、有疾患患者や低体力者はもちろん、さらに高齢者に対する有酸素運動として導入可能な運動強度と考えられた。 しかし、実際の酸素摂取量と比較し、特に女性でRPEが高かったことより、今回用いた方法は局所の筋に負担がかかっていると考えられ、今後高齢者での更なる検討を行う必要があると思われる。