抄録
【はじめに】
姿勢調節には感覚入力・中枢神経処理・出力機構に分類され,出力機構には関節可動性・骨-関節(アライメント)が挙げられる。
リーチテストはこれまで前方リーチの筋力との相関性の検討は行われているが,側方・後方の検討は少ない。左右の身体重心(COG)の移動能力はADL,基本動作能力とも大きく関係するといわれており,側方リーチの検討も必要と考えられる。そこで,本研究では側方リーチ時に必要な出力系である体幹柔軟性との関連性を多方向リーチテストを用いて検討することとした。
【対象と方法】
対象は若年者群29名と高齢者19名とした。
体幹柔軟性の測定は前方・右方・左方は指床間距離(FFD)を用いた。後方は被験者の右側に角度計のついたボードを設置し,後屈した位置をマークした。
多方向リーチテストの方法は開眼・裸足の状態でActive Balancer(SAKAI社)上に両足踵間距離が20cmとなるように位置させた。リーチは上肢を90度挙上位から5秒以内に最大リーチを行い開始肢位まで戻ることとした。測定上の注意点として視線は各方向を向く,上肢を水平に伸ばす,動作制限として足底離地しない,膝屈曲しないこととした。測定は各方向2回行い,1週間後同様のテストを行なった。
【結果】
_丸1_リーチ距離と体幹柔軟性では前方リーチを除いて相関性が認められた。_丸2_リーチ距離と足圧中心(COP)では全ての方向において相関性が認められた。_丸3_各方向間で相関性が認められた。_丸4_日内・日間ともに信頼性が認められた。
【考察】
本研究の結果より,側方リーチ時の中枢神経系の姿勢調節である立ち直り能力と出力系である体幹柔軟性との関係性が認められた。また今回用いた体幹柔軟性の測定法もバランステストの一つとなりうることが示唆され,FFDは支持基底面内での前下方・右下方・左下方へのリーチとして考えられる。前方リーチが体幹柔軟性との相関性が認められなかった要因として,体幹柔軟性を最大限に用いられず,他のリーチ構成要因が最終的な制限因子となっていることが推察された。COPに関しては相関性が認められ,身体重心(COG)を動かすためにはCOPの軌跡が必要であることが裏づけされた。信頼性に関しては日内・日間再現性が認められ,多方向リーチテストの有効性が示された。