抄録
【はじめに】
Functional Reach Test(以下FRT)はDuncanらが報告した臨床的で簡便なバランス検査のひとつである。今回パーキンソン病(以下PD)患者を対象にFRTを実施し、Functional Reach(以下FR)の特徴について検討したので報告する。
【方法】
対象は高次脳機能障害のないPD患者群12名(男性8名、女性4名)と健常高齢者群12名(男性8名、女性4名)とした。FRの測定はDuncanらの方法に従い計3回施行し、その平均値を採用した。FRに身長補正をかけた値(FR/height×100)をFRTの指標(以下FRh)とした。PD患者ではさらに、Unified Parkinoson's Disease Rating Scale (以下UPDRS)part III(満点108点、点数が高いほど運動機能障害が重症)、Hoehn & Yahrのステージ分類を測定した。統計処理は対応のないStudentのt検定及びSpearman順位相関係数を行ない、危険率5%未満を有意とした。
【結果】
年齢と身長はPD患者群で65.3±6.6歳(53-76歳)、158.5±7.9cm、健常高齢者群で67.0±4.5歳(60-76歳)、157.0±7.1cmとなり、年齢、身長とも2群間で差を認めなかった。FRhはPD患者群で15.05±3.9、健常高齢者群で21.1±1.4となり、PD患者で有意(p<0.001)に低くなった。
PD患者群は、罹病期間6.42±3.5年、UPDRS23.1±10.0点、Hoehn & YahrはI2名、II5名、III2名、IV3名であった。FRhとUPDRSの相関係数は有意な負の相関(r=-0.58、p<0.05)を示した。FRhとUPDRS小項目では、安静時振戦や固縮、歩行は有意な相関を認めず、椅子からの立ち上がり(r=-0.62、p<0.05)、姿勢の安定性(r=-0.60、p<0.05)は有意な負の相関を示した。
【考察】
FRhはPD患者群で健常高齢者より有意に低い値をとり、Behrmanらと同様の結果を得た。また、UPDRSと有意な負の相関を認めたことから、基底面を固定した随意的バランス能力の低下がPDの運動機能障害と関連することが分かった。FRhとUPDRSの小項目の比較より、PD患者の随意的バランス能力の低下は、無動・寡動や姿勢反射障害の重症度と関連する可能性が示された。BehrmanらはFRTのみでは転倒リスクの弁別は困難としたが、PD患者のFRが転倒群で非転倒群よりも有意に低いとの報告もある。PD患者のFRはPD患者に認める運動障害のうちバランスの一面を簡便に示し、PD患者の転倒予測に有用な可能性があるため今後検討する必要性がある。