抄録
【目的】
パーキンソン症候群の患者では、前傾姿勢などの立位アライメントの偏位が特徴的にみられる。今回、立位アライメントの偏位の程度と本人の認識に大きな差がみられた患者を担当し、立位アライメントの再構築を目的に認知運動療法を施行した結果、比較的良好な効果を得られたので報告する。
【対象】
対象は当院通所リハビリテーションを利用しているパーキンソン症候群の患者で、性別:男性、年齢:79歳、発症後約4年経過、Yahr stage:4、Unified Parkinson’s Disease Rating Scale(以下UPDRSと略す):72点である。来院頻度は4回/週、訓練時間は20分。投薬状況はアマンタジン50mg、1日3錠である。なお、当院の通所リハビリテーション開始後、一般的な理学療法を約18ヶ月間施行してきたものの、症状の変化は認められなかった。
【方法】
方法は閉眼立位にて、他動、自動運動により5種類の硬度の異なるクッションの中から任意の2つのクッション硬度を比較する課題を与えた。部位は肩、腰、膝関節部とし、方向は後方と外側の二方向とした。垂直の壁を利用し、任意の部位にて2つのクッション硬度を交互に比較する課題を行い、次いで任意の部位2ヶ所同時に2つのクッション硬度を比較する課題を与えた。期間は約2ヶ月、頻度は1回/週とし、その他の日には関節可動域訓練、肋木を使用した立位訓練、平行棒内歩行訓練など、従来施行してきた理学療法を実施した。
【効果判定】
効果判定は、定点を基本的立位姿勢にて重心線が通るとされる部位(耳垂、肩峰、大転子、膝関節前部、足関節外果)とし、定点の偏位を側方からの矢状面上にて捉え、立位アライメントの変化をビデオ撮影し測定した。なお、各定点間のなす角度偏位は、垂直線と各定点間を結ぶ直線とのなす角度とした。
【結果】
立位アライメントの変化は、耳垂-肩峰間45°→10°、肩峰-大転子間11°→6°、大転子-膝関節前部間4°→2°、膝関節前部-足関節外果間2°→11°と改善が認められた。Yahr stageでは変化が認められなかったものの、UPDRSでは72点から60点へと改善がみられた。基本動作では、上肢支持なし静止立位が保持不可能から2分以上保持可能へ、また固定型四脚歩行器にて歩行が可能となる変化がみられた。
【考察】
認知運動療法を約2ヶ月間施行した結果、立位アライメントに経時的に改善がみられ、それに伴い基本動作等においても改善が認められた。患者の立位アライメントに対するコメントにも良好な変化がみられ、本症例における立位アライメントの偏位は、身体と環境との相互関係における認知的要因が関与することが示唆された。また、慢性期の患者であっても効果が得られることが認められた。