抄録
本研究は,絵師である吉田初三郎(1884-1955)が描いた鳥瞰図《強羅公園案内図》について造形論的に検討した.初三郎が描く鳥瞰図では描きたい対象をわかりやすく表現するために,建物や交通機関などの位置関係や,遠近関係が随所で強調されている.そのため,頻繁に“デフォルメされた歪み”が作品に表れている.単なる地理的な図としての役割を超え,絵画的要素が強く見られる初三郎式鳥瞰図の構図の特質を明らかにするためには,図学的アプローチが不可欠であると考える.鳥瞰図の構図を明らかにするべく,線画を用いた構図の分析と3Dソフトにおけるカメラパラメータを用いた歪みの可視化を図る.そして,描かれたランドマークの投象表現を明らかにし,鳥瞰図絵師としての初三郎の試みを論じる.