理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 36
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理学療法基礎系
萎縮筋における毛細血管の退行現象と運動による抑制効果の検討
*藤野 英己上月 久治田崎 洋光武田 功近藤 浩代石田 寅夫梶谷 文彦
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抄録
【目的】骨格筋の毛細血管は筋線維上を蛇行や吻合をしながら走行するが,筋萎縮に伴って毛細血管密度は増加し,capillary to muscle fiber ratio(C/F比)は減少する.これらの毛細血管の変化は筋萎縮に伴う毛細血管の退行化と考えられる.一方,Kirbyらは極短期間の運動により,後肢懸垂中の筋タンパク質の減少を予防することが可能であることを示唆し,分子シャペロンの存在が培養血管内皮細胞のアポトーシスを予防することが報告されている.本研究では筋萎縮による毛細血管の3次元構造変化と血管内皮細胞のTUNEL陽性細胞の検出を行い,廃用性萎縮の予防対策として,寡動前のトレッドミル走行よる萎縮予防の効果を筋内毛細血管網の変化とheat shock protein(HSP)との関連から検証した.
【方法】雄性Wistarラット(9週齢)を用いて,Morey法で2週間の後肢懸垂による廃用性萎縮群(HS),HS前にトレッドミル走行(20m/min, 傾斜20°,25分間)を行った群(ExHS),および対照群(CONT)の3次元毛細血管構造,血管内皮TUNEL陽性細胞,およびHSP72濃度を測定した.3次元毛細血管構造は走査共焦点レーザー顕微鏡を使用して,骨格筋中100オm厚の毛細血管を可視化し,毛細血管径,吻合毛細血管や血管蛇行性の測定をした.血管内皮TUNEL陽性細胞はvWF抗体で免疫染色し,TUNEL法でDNA断片化を標識した.HSP72はSDS-PAGE(10%)法により分子重量で分離し,immunoblotting法でHSP72(モノクロナール抗体,stressgen)を標識し,ECL法で可視化した.得られた各群の測定値は分散分析により検定した.また,post-hoc(Bonferroni検定)で特定の2群間の比較を行い,有意差を判定した(P<0.05).
【結果および結論】Morey法による2週間のHSで,筋線維断面積,筋原線維タンパク質量,およびslow typeミオシン重鎖アイソフォームの減少が観察され,有意な筋萎縮がみられた.また,毛細血管の構造変化が観察され,特に吻合毛細血管の著明な減少を示した.血管内皮のTUNEL陽性細胞も有意に増加し,HSP72も減少した.一方,寡動前運動を行ったExHSではHSと比較して,毛細血管の構造が保持され,血管内皮のTUNEL陽性細胞も低値を示した.HSP72はCONTより有意に高値を示した.寡動前の運動は分子シャペロンの増加を背景とし,これらの変化の進行を緩慢にさせたものと考えられる.これらの結果から寡動前の運動は2週間の後肢懸垂で生じる骨格筋の急速な萎縮進行を予防できる可能性を示唆した.しかし,この結果は期間特異性とも考えられるため,継時的な変化も観察する必要があると思われた.
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© 2005 日本理学療法士協会
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