理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 516
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理学療法基礎系
リフティング動作時の重心動揺に与える重量負荷量の影響
*池田 拓史後藤 伸介川崎 和代稲沢 奈津美田端 智恵美中原 利恵
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抄録
【目的】物の持ち上げ動作(以下リフティング)においては、腰痛予防の観点からSquat法が推奨され、Stoop法は避けるべきであるとされている。今回、重量物を持ち上げる際に、その重量負荷量の違いがリフティング時のバランスに影響を及ぼすのかを調べた。
【方法】対象は、健常成人20名(男性8名、女性12名、平均年齢24.6±2.2歳)であった。全ての対象者は、研究の趣旨についての説明を受けた上で、研究に対する協力を承諾した。方法は、体重の0%、10%、20%の重量物を箱の中に入れ、それを両手で持ってリフティングを行い、その時の足圧中心の総軌跡長を測定した。リフティングは、両肘関節伸展位で箱を持ち、足関節内果の高さまで下ろし、再び直立位まで戻る動作を繰り返させた。動作速度は4秒間で1動作(2秒で下ろし、2秒で上げる)とし、合計5サイクル行い、その間は静止することがないようにした。測定には重心動揺計(グラビコーダーGS-1000アニマ社製)を用い。各リフティング動作の順番は無作為とした。
【結果】Stoop法での総軌跡長は、負荷0%で108.12±17.49cm、負荷10%で108.81±20.92 cm、負荷20%で114.78±23.53 cmであった。同じくSquat法では各々124.35±20.28 cm、124.95±21.11 cm、133.10±23.88 cmであった。いずれも重量負荷の違いによって総軌跡長の平均値に有意差が認められた。Stoop法での負荷0%に対する総軌跡長の増加率は、負荷10%時1.01±0.03 、負荷20%時1.06±0.13であり、同じくSquat法では1.01±0.02、1.07±0.10であった。いずれも負荷10%より20%で有意に総軌跡長の増加率が大きかった。
【考察】リフティングの戦略に関わらず、持ち上げる物の重量が増大することによりリフティング時の重心動揺が大きくなり、特に体重の20%の負荷量において著明となることが示唆された。布谷らは、腹直筋や内外腹斜筋重層部位の筋活動は、体重の20%以上の負荷により増大すると述べており、この重量が明らかな身体的負担を生じさせる負荷量ではないかと考える。腰痛患者は、健常者に比べ重心動揺が大きいと言われており、そのバランス障害が腰椎部への負担を増大し、腰椎疾患の増悪につながるとされている。従ってバランス機能の改善は腰痛症状の予防に重要と思われる。腰痛予防の理学療法では、重量物運搬作業などにおけるStoop姿勢は脊柱の筋骨格系負担が大きいとして、Squat姿勢による膝屈曲戦略をとるように労働指導がなされている。今回の結果からは、Squat法とStoop法のいずれのリフティングでも負荷量の増加に伴い身体動揺が増大しており、バランスに対しては重量負荷による影響度は同等であると考えられた。
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© 2005 日本理学療法士協会
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