抄録
【はじめに】本研究の目的は、床圧中心位置(以下、COP)や動作開始肢位の違いが体幹制御や肩甲上腕関節運動にどのような影響を及ぼすかを検討することである。
【対象と方法】対象は、健常男性4名、女性2名。方法は、重心動揺計(アニマ社製GRAVICORDER G-620)上に高さ50cmの台を固定。骨盤中間位・足底非接地の端座位にて、前額面上での右側方自由最大リーチ動作を行い、重心動揺を測定(20Hzにて30秒間)。運動課題は、リーチ側・非リーチ側へのCOP移動と、肘屈曲位・下垂位の動作開始肢位を組み合わせた4つのリーチ動作とした。両側肩峰・後上腸骨棘・第7胸椎・右上腕骨外側上顆・橈骨茎状突起にカラーマーカーを貼付、後方よりデジタルビデオ、三次元動作解析装置(キッセイコムテック(株)社製 Kinema Tracer)にて撮影。また、表面筋電計(Noraxon社製)を用い、三角筋・棘下筋の筋積分値を測定。評価パラメータは、1:最大リーチ時の体幹制御パターンと上肢回転中心、2:COPの総軌跡長・矩形-外周面積・X方向最大振幅値、3:肩峰・骨盤の傾斜角度および上部・下部体幹回旋角度、4:被験筋の筋活動量の比較検討を行った。
【結果】6名中4名は、COPリーチ側移動では『台形パターン』、上肢回転中心はTh7付近、逆にCOP非リーチ側移動では『逆台形パターン』、上肢回転中心は肩甲上腕関節であった(胸椎制御群とする)。また、6名中2名は、COPリーチ側移動では『平行四辺形パターン』、逆にCOP非リーチ側移動では『逆平行四辺形パターン』、上肢回転中心は常に肩甲上腕関節であった(腰椎制御群とする)。COPパラメータは、肘屈曲位・リーチ側で最小値、下垂位・非リーチ側で最大値、肩峰・骨盤傾斜-下部体幹回旋角度は、非リーチ側で高値、腱板筋活動量は、肘屈曲位・リーチ側で最小値、下垂位・非リーチ側で最大値を示した。
【考察およびまとめ】胸椎制御群は、体幹の側屈が生じ、上肢回転中心は上半身重心があるTh7付近となり、上腕骨と肩甲棘が一致するzero positionに近い肢位となるため、肩甲上腕関節への負担が分散できると推察される。逆にCOP非リーチ側移動は、体幹の質量中心を利用したカウンターアクティビティが生じ、上肢回転中心は肩甲上腕関節に位置し、肩甲胸郭関節の動きを伴わないため肩甲骨上方回旋が制限され、肩甲上腕関節に負担の加わる動作と推察される。腰椎制御群は、体幹が一塊となって動き、肩甲胸郭関節の動きが制限され、肩甲骨上方回旋が生じないため、過剰な負担が肩甲上腕関節や腱板にかかることが推察される。COPリーチ側移動では、各体節の質量を上半身重心付近で、逆にCOP非リーチ側移動では、肩甲上腕関節部分で吊り合いをとるため、COPリーチ側移動で、肩甲上腕関節にかかる負担は少ないと推察される。肘屈曲位・リーチ側での動作は、重心移動が行いやすく、肩甲上腕関節や腱板に加わる負担が最小であるが示された。