抄録
【目的】
人工膝関節置換術(以下TKA)後における関節可動域(以下ROM)の回復は、術後早期ほど大きな改善を認めるが、その後徐々に緩やかとなり、やがてほぼ一定のROMを保つ。退院後も多くの症例ではROMが低下することなく維持されるが、一部の症例ではROM低下を認める場合がある。今回、我々は変形性膝関節症(以下OA)と慢性関節リウマチ(以下RA)のROMが低下した症例がどの程度存在するかを明らかにすることを目的とした。
【対象と方法】
我々はTKAを施行した症例に対して術後6ヶ月ごとにROM測定を施行してきた。この測定を3年間おこなえた69名103肢を対象とした。内訳はOAが43人63肢、RAが26人40肢で、手術時の平均年齢はOAが71.2±7.1歳、RAが60.0±8.0歳であった。分析したデータは術後6週時と術後6ヶ月ごとの伸展と屈曲のROM値である。このデータをもとに、以下の2つについて検討した。1)術後6週から3年までの間でROM低下を認めた症例:術後6週と術後6ヶ月のROMの差、術後6ヶ月と術後1年のROMの差と順次、前データとの差を求め、その総和が負の値となったものをROM低下群とし、全症例数の何割を占めるかを検討した。2)ROM低下群におけるOAとRAの割合:ROM低下群の総数を分母とし、OAとRAの占める割合を算出した。また、ROMが低下した症例のなかでも、大きく低下したものとそうでないものとがあり、その割合を調べるため-10度未満を軽度低下群、-10度以上を重度低下群として検討した。
【結果および考察】
1)術後3年間の間でROMが低下したものは伸展では1.9%と、ほとんどの症例がROM低下を示さなかったものの、屈曲では19.4%であった。これは退院後の日常生活で、歩行等よく行う動作では膝関節の最終伸展域での反復動作が行われるが、最終屈曲域を必要とする動作はあまり行われず、一部の症例で屈曲ROMが低下したものと推測される。2)ROMが低下した症例におけるOAとRAの占める割合は、伸展ではOAが0%、RAが100%であり、RAのみがROM低下を示したが、そのすべては軽度低下群であった。屈曲ではOAが45.0%、RAが55.0%でありRAのほうがやや多い傾向を示した。軽度低下群と重度低下群に分類したものについては、屈曲ではOAで軽度低下群が25%、重度低下群が20%であった。これに対しRAでは軽度低下群が15%であったが、重度低下群については40%と全体の半数弱を占めており、ROM低下群のなかでも重度なものはRAに多いことが伺えた。これはOAが膝関節のみの単独病変であるのに対しRAは全身性疾患であり、足関節などの他関節痛の存在等が退院後の活動量を減少させ、ROMを低下させたものと推測される。近年、クリニカルパス導入により、術後の在院日数は減少傾向にあるが、退院後においても屈曲ROMについては管理が必要であり、とくにRAについてはより注意が必要であると思われた。