抄録
【目的】
小児期の反射性交感神経性ジストロフィー(Complex Regional Pain Syndrome以下CRPS)の特徴は誘因が明らかでなく思春期前の女児・下肢に多く発症し,骨病変や萎縮性変化が少ないこととされ,その背景には精神心理的要因を持つことが多い.家庭や学校環境の評価,心理評価の重要性は指摘されているが,本邦における系統的な評価と治療の報告は少ない.また小児CRPSは理学療法など保存療法に反応することが多く比較的短期間に回復するが,再発することも稀ではないとされている.今回,10歳~15歳時にCRPSを発症し1年間以上の経過を把握できた3症例の理学療法と病状経過をまとめ,考察を加えて報告する.
【症例1】
18歳女性 12歳頃より右下肢痛を自覚していた.14歳時に階段を踏み外して転倒し右第5中足骨を骨折.受傷5ヶ月後(15歳),疼痛のため荷重歩行困難となり麻酔科へ入院.CRPSと診断,加療されるが疼痛軽快せず.当部初診時,疼痛VAS 90,皮膚温低下,知覚過敏と異常知覚を認めた.経皮的神経電気刺激(以下TENS),交代浴,全身遠赤外線照射を順次実施.疼痛の訴えは強いが,治療経過への関心は低かった.4ヶ月間右足部の症状は持続.右下肢の疼痛と血流低下は続くが退院し,車椅子を併用しながら復学.現在右足痛あるが,事務員として就労中.
【症例2】
12歳男性 10歳時,誘因なく右拇趾球の発赤,腫脹,疼痛が出現.薬物療法で効果なく,当院思秋期外来へ紹介.さらに疼痛治療のため当部へ紹介された.VAS 70,骨萎縮,発赤,疼痛過敏,異常知覚,発汗亢進を認めCRPSと診断.TENS,直線偏光近赤外線照射を開始,2ヶ月後VASは44に低下,新学年から松葉杖で復学した.11歳のとき父親とけんかして発作的に薬物の大量摂取,急性薬物中毒となり緊急入院.翌日退院.整形外科を数回受診するが,その後の受診歴なし.
【症例3】
16歳男性 14歳時,誘因なく左足に疼痛出現.近医にて1週間のギプス固定を受けてから疼痛が増悪.他院を経て4ヶ月後に当院麻酔科へ紹介入院,CRPSと診断.局所麻酔や硬膜外ブロックを行うが効果なし.疼痛の強さに比較して機能障害への関心の低い言動を認めた.TENSと荷重歩行練習を実施.斜面台や体重計を利用して荷重量の調整と不安軽減に配慮した.3ヶ月間加療し疼痛が軽減したため,自宅退院し新学期から復学した.徐々に歩行能力は向上し,VAS 50,新学年では修学旅行や運動会へも参加した.
【考察】
Sherryの指摘した小児CRPSの特徴と多くの一致を認めたが,骨萎縮があり治療期間は長い傾向にあった.物理療法よりもレクレーション的な要素を多くしたことで,疼痛不安の軽減に有効な症例があった.また背景に精神的問題を持つことが多く,心理面の評価介入のためにはチーム医療の役割がより重要であると考えた.