抄録
【目的】所謂顎関節症性開口制限は顎関節運動に関与する筋と頸椎周辺筋の機能不全が関与する。今回開口制限を訴えた症例に対し頸椎周辺筋の評価と対応をおこなった。開口制限に関与している中斜角筋について検討する。
【方法】対象 2001年5月から2004年10月までに当院へ受診した顎関節症例44例中、開口量が40mm以下の症例は24例である。開口量は坐位で最大切歯間距離である。検査1 対象者の頸部全体の自動運動(屈曲、伸展、左右回旋、左右側屈)と頭部の前後方向への並進運動による疼痛の発現の有無を確認し、自動運動可動域も検査する。頸部の自動運動時の疼痛に関与する筋への対応として運動に関与する筋の触知圧迫検査を検者の指腹で行う。疼痛が軽減する筋の圧迫部位に直線偏光型筋赤外線(東京医研)を出力 80%で2秒間照射、5秒間休止のサイクル照射の設定により7分間施行する。照射後頸椎疼痛発現動作を確認する。検査2 中斜角筋を緩和する肢位により顎関節の開口量の変化と開口時の疼痛の変化を検査する。対象は坐位で体幹を左側に45°傾斜し、頭部を垂直に保った姿勢を保持する。この肢位では右側の中斜角筋の緊張が軽減する。この肢位で開口動作を行い、開口量と開口時疼痛を検査する。次ぎに右側へ対象者の体幹を傾斜し、同様に開口量と開口時疼痛を検査する。この検査により開口量が増加あるいは疼痛が軽減すれば、緩和させた中斜角筋に以下のように対応する。中斜角筋を触診し、緊張している部位に直線偏光型近赤外線を照射し、照射後中斜角筋のストレッチングを行う。
【結果】頭頸部の自動運動時痛を認めた症例は対象の24例中9例であった。疼痛が発現した動作は回旋4例、側屈1例、後屈2例、頭部前方並進運動1例、頭部後方並進運動1例であった。頸部の自動運動時痛の軽減に中斜角筋が関与した症例は8例であった。中斜角筋緩和検査で開口量が増加した症例は24例中16例であった。中斜角筋への対応により開口量が増大した症例は24例中17例であった。その17例の中斜角筋への対応前の開口量の平均は 32 mmであったが、対応後の開口量の平均は 5.9mm増加し、37.9 mmになった。開口量の増加の範囲は 2mmから10mmであった。
【検討】開口運動は後頭環椎関節および上位頸椎の後屈を伴い行われる。顎関節機能に関与する下顎窩の側頭骨と上顎を含む頭蓋の運動は、後頭骨ム環椎ム軸椎の上位頸椎領域において行われる。中斜角筋は第2~7軸椎横突起後結節に起始し、第1肋骨および第1肋骨間隙に呈している。中斜角筋が緊張状態になると、上位頸椎の伸展が制限され、頭蓋骨が前屈位になり、顎関節の開口制限を起こしやすい。
【まとめ】中斜角筋の評価と対応により上位頸椎の伸展機能不全を調整することは、顎関節の開口制限に対して有効である。