抄録
【はじめに】内側型変形性膝関節症(以下、膝OA)の歩行時の病態運動としてLateral thrust(以下、LT)が認められる。膝OAでは大腿四頭筋(以下、四頭筋)筋力増強が一般的に処方されるが、四頭筋とLTの関係についての報告は少ない。本研究では健常人の四頭筋に筋疲労を起こすことで、一過性に四頭筋機能不全を生じさせ、その前後での歩行時の脛骨振動と膝角度の変化を検証した。
【方法】下肢疾患、および中枢神経疾患のない女性10名(平均年齢22.7才±1.7)を被検者とし、四頭筋筋疲労前後での歩行時の脛骨振動、および膝伸展筋力を計測した。歩行中の脛骨振動を計測するため、圧電型の3軸加速度センサ(MA3-04ACマイクロストーン(株))を用いた。加速度計を右腓骨頭直下、外果直上に固定した。また歩行中の矢状面での膝関節角度を測定するため、電気角度計(SG150型Baiometorics社)を用いた。外果に固定した加速度計によりHeel contactを同定し、1歩行周期を100%として、対1歩行周期時間に換算した。腓骨頭に固定した加速度計より法線加速度、前後接線加速度、側方接線加速度を計測した。また前後、側方接線加速度データを積分し、速度を求めた。歩行条件は測定肢から歩行開始し、12歩の歩行を行い、5・7歩目を解析対象とした。それを3回行い、計6歩行周期を解析した。膝関節伸展・屈曲の筋力測定は、CYBEX NORM770にて、膝関節可動域110°~0°の範囲で60°/secを5回、180°/secを10回最大努力下で行い、膝屈曲・伸展の最大トルクを測定した。測定後、筋疲労を起こすため、背側を壁に固定し、股関節、膝関節、足関節をそれぞれ90°位にて可能な限り維持し、大腿四頭筋の筋疲労を生じさせた。負荷直後に同様の条件で歩行時の脛骨振動と筋力を測定した。
【統計解析】負荷前後の比較を行うために、加速度、速度、角度パラメータに対し、Wilcoxonの符号付順位検定を用いた。また前後・側方接線加速度波形を分類し、比較はカイ2乗検定を用いた。有意水準は5%とした。
【結果】負荷施行時間は平均3分31秒±38.9秒であった。前後接線速度波形分布は、負荷前1峰性61.1%、やや2峰性26.7%、2峰性12.2%、3峰性0%、負荷後1峰性45.6%、やや2峰性16.7%、2峰性33.3%、3峰性4.4%で有意に異なっていた。前後接線速度においては、負荷前AVPT(前方最大速度時間)平均9.7%GC±1.5、負荷後AVPT平均21.7%GC±14.8で有意差が認められた。その他については負荷前後に有意差は認められなかった。
【まとめ】本研究の結論として、四頭筋は膝関節の矢状面への制御に関与すると推測できるが、前額面の脛骨振動においてあまり影響は与えなかった。膝OAの立脚初期に起こるLTは、四頭筋による筋機能不全のみで起こると考えるよりも、四頭筋筋機能不全と他の要因が複雑に絡み合って生じていると推測される。