抄録
【はじめに】
当院回復期リハ病棟に入棟する大腿骨頚部骨折患者は、約4割が痴呆を有している。また、入院期間中に痴呆性老人の日常生活自立度判定基準(以下、痴呆度)が変化する者が多い。今回、その痴呆度の変化に着目し、退院時転帰先との関係を調査したので報告する。
【対象および方法】
H15年度回復期リハ病棟に入棟した大腿骨頚部骨折患者77例を対象とした。そのうち、入棟時に痴呆を有する者は30例であった。これらをさらに入院時から退院時までの痴呆度の変化別に改善群15例、維持群7例、低下群8例に分類し退院時転帰先、在院日数、退院時移動能力、障害老人の日常生活自立度判定基準(以下、自立度)、痴呆度が変化する時期について調査し比較検討を行った。
【結果】
大腿骨頚部骨折患者で痴呆のない者の退院時転帰先は、自宅復帰38例、介護老人保健施設(以下、老健)4例、転院3例であり、在院日数は平均76日であった。痴呆を有する者は自宅復帰9例、老健9例、転院12例であり、在院日数は99日であった。また群別に見ると、改善群は自宅復帰4例、老健7例、転院4例であり、以下、同様に維持群は2例、2例、3例、低下群は3例、0例、5例であった。在院日数は、改善群96日、維持群76日、低下群123日であった。退院時移動能力は、改善群は独歩5例、介助歩行8例、歩行不可2例(平行棒内起立)であり、以下、同様に維持群は2例、1例、4例、低下群は1例、5例、2例(独立坐位、もたれ坐位)であった。自立度は、改善群がA4例、B11例、維持群はA3例、B4例、低下群はA3例、B3例、C2例であった。痴呆度が変化する時期は、改善群転入時7例、転入1ヵ月後8例、低下群は転入時4例、転入1ヵ月後1例、転入6ヵ月後1例、退院時2例であった。
【考察】
今回の結果より入棟時の痴呆の有無が退院時の転帰に反映し、入棟中の痴呆の改善が退院時の移動能力と自立度に影響する可能性があることが分かった。また在院日数については他の2群と比較し維持群が短く、患者の状態が受傷前と比較し変化がない方が、家族にとって自宅復帰を受け入れやすい印象をもった。そして、転帰先については改善群が老健に入所する割合が高く、痴呆が改善することで自宅復帰の可能性が広がり、老健を経由し自宅復帰を最終的な目標とする症例が多くみられた。大腿骨頸部骨折など主に高齢者が急性に発症する疾患は、患者自身の身体状態や環境の急激な変化により精神的ストレスを急激に受けるため、一時的痴呆状態に陥りやすい。落ち着いた療養環境の整備、患者と職員間の信頼関係の構築、家族の頻繁な面会等できる限り早い時期に安定した精神状態が保てるよう努力する必要がある。今後受傷前の精神状態を考慮した検討が必要と考える。