抄録
【はじめに】前十字靱帯(以下ACL)再建術後のリハビリテーションにおいて,大腿四頭筋筋力低下は重要な問題の一つである. 特に,ACL再建術後では神経・筋機能の変化が影響し,筋力と筋出力に差が生じる可能性があると考えられる.よってACL再建術後の大腿四頭筋筋力について,筋力・筋活動パターンを測定し,健側との機能的な比較,また周波数成分の変化について検討したので報告する.
【対象及び方法】半腱様筋・薄筋腱による鏡視下ACL再建術を施行された7例(男性5名,女性2名,平均年齢26.2±7.7歳,手術から測定までの期間:1〜17カ月)を対象とした.
方法は,等速性筋力測定器BIODEX System3を用いて最大等尺性収縮及び最大等速性膝伸展運動を角速度60,180,300DEG/sにて各3回施行し,平均値を算出した.表面筋電図周波数解析は,BIODEXによる最大等尺性収縮時の大腿直筋,内側広筋,外側広筋の表面筋電図をマルチテレメーター(日本光電社製)にて導出した.サンプリング周波数2000HzにてA/D変換し,BIMUTAS2(キッセイコムテック製)にて解析し,低・中・高周波各帯域の含有率を算出した.また,大腿周径の計測を行った.計測部位は膝蓋骨上縁より5・10・15cm部位とした.上記の方法により,1,大腿周径の患側と健側の差(以下患健差)とピークトルクの健側に対する患側の割合(以下健側比)についてピアソンの相関係数を用いて検討した.2,低・中・高周波各帯域の含有率の健患差と,手術より測定までの期間により2群に分け,含有率の変化をt検定を用いて比較した.なお,有意水準は0.05以下とした.
【結果】1,大腿周径の健患差とピークトルク健側比の間に有意な負の相関が認められた.(r=-0.759,p<0.05)2,含有率の健患差は各筋において患側に低周波数成分が,健側に高周波数成分が多い傾向であったものの,有意差は認められなかった.しかし,被験者を術後4カ月前後の群に分け比較したところ,周波数成分に有意差が認められた.
【考察】結果より,筋力の増加には周径の増大が関与していることが示された.筋力の増加には筋肥大だけではなく,大腿四頭筋の高周波数成分含有率の増加に伴う運動単位数増加やインパルス発射頻度の上昇などが重要な要因であると考える.周波数成分の移行については様々な見解があり,詳細は不明といわれているが,今回高周波数帯域への移行が再腱術後4カ月前後で起こる可能性が示唆された.
本学会において更に考察を加え詳細について報告する.