抄録
【目的】
体重免荷トレッドミルトレーニング(以下、BWSTT)は、外傷性不全脊髄損傷患者に対する歩行トレーニングとして、近年注目をあびている。しかし、Stevensonらは、外傷性と非外傷性の脊髄損傷は区別して治療を行うことを主張しており、BWSTTの適応に関しても同様であると考えられる。そこで、非外傷性不全脊髄損傷患者に対してBWSTTを実施し、歩行能力に対する影響について得られた知見を報告する。
【症例と方法】
症例は、研究に同意の得られた不全四肢麻痺患者1例、不全対麻痺患者2例の3症例。不全四肢麻痺患者は、69歳の男性で、頚髄症により四肢麻痺を呈し、除圧術を施行された症例であった。不全対麻痺患者は47歳の女性と54歳の男性で、前者の症例は脊椎腫瘍により対麻痺を呈し、椎体摘出術および置換術を施行された症例であった。後者の症例は、後縦靱帯骨化症および黄色靱帯骨化症により対麻痺を呈した症例で、拡大開窓術および固定術を施行された症例であった。3症例はいずれも術後7日目より、ストレッチや筋力トレーニング、平行棒や歩行器を用いた歩行トレーニングなどの通常理学療法(PT)介入を実施した後、BWSTTによる介入を開始した。なお、PT介入時とBWSTT介入時の頻度は同様に行った(週4~5回)。BWSTTは、体重免荷量、トレッドミル速度、トレーニング時間の3条件を設定する必要があるが、体重免荷量は症例の体重の40%を上限として、徐々に漸減させた。トレッドミル速度およびトレーニング時間は、症例の許容限界までとし、徐々に漸増させた。PT介入開始時、BWSTT介入開始時、BWSTT介入終了時に、機能障害レベルとしてAmerican spinal cord injury association Impairment Scale (AIS), 下肢筋力としてLower Limb Motor Score (LLMS), 歩行能力としてFunctional Independence Measure (FIM)(移動項目のみ)、歩行速度、平均歩幅、歩行率を評価した。
【結果】
PT介入開始からBWSTT介入開始までの期間は3~17週間で、BWSTT介入は約6~10週間実施した。BWSTT開始時と終了時を比較すると、AISおよびLLMSは変化量が小さかった。しかし、FIMは1(全介助)から5(監視)または6(修正自立)まで改善、さらに歩行速度、平均歩幅、歩行率も向上した。
【考察】
今回得られた知見は、外傷性の不全脊髄損傷患者に対する先行研究の結果とほぼ同様であると考えられ、非外傷性の症例に対してもBWSTTは有効であることが示唆された。加えて、BWSTTは機能障害レベルや下肢筋力に及ぼす影響は小さいが、歩行能力を特異的に向上させる課題指向型の歩行トレーニングとして有効であると考えられた。