抄録
【はじめに】
頭頸部腫瘍の治療後,嚥下関連筋の機能低下と軟部組織の硬化や癒着による嚥下障害を合併しやすいため,ビデオ嚥下造影検査(VF)やビデオ喉頭ファイバースコピー検査(VE)によって評価される.嚥下障害のリハビリテーションにおいて,理学療法士(PT)による頭頸部の可動域改善や肢位の保持は重要であり,VFやVEによってリアルタイムに嚥下障害の改善を評価することが可能である.今回,頭頸部腫瘍術後の嚥下障害に対してPT介入を経験したので,症例の経過と結果を,考察を加えて報告する.
【症例1】
73歳男性,中咽頭腫瘍.2003年8月中咽頭腫瘍に対して化学療法(ChT)と放射線療法(RT)を行い,12月右舌根から舌半切除・胸三角筋(DP)皮弁による再建を受けた.2004年1月僧帽筋皮弁による再々建術施行.2月喉頭吊り上げ術施行.VE所見:食道入口部の開大が不十分で喉頭つり上げ術により、下顎と喉頭が直接連動して動いていた.3月8日,頸部可動域と下顎突出量の改善による食道入口部開大を目的にPTを開始した.頻回の手術とChT・RTのため頸部可動域障害を認めた.PTで頸部ストレッチング,マッサージ,頸部筋力強化を行い,下顎突出量や嚥下のタイミング改善を認め,ミキサー食を摂食可能となった.
【症例2】
42歳女性,舌腫瘍.1985年舌腫瘍に対してRT施行.2004年6月舌腫瘍摘出,腹直筋遊離皮弁による口腔底再建を受けた.術後13日目STによる嚥下・言語訓練開始.術後42日目舌骨上筋群を部分的に切除したことによる喉頭挙上の左右非対称性を認めたため,PTを開始した.メンデルソン手技,右頸部ストレッチング,徒手的マッサージ,頸部屈筋群強化により.経口摂取(水分,ポタージュ状)可能となり,術後62日で退院した.
【症例3】
67歳男性,左耳下腺腫瘍.1989年左耳下腺腫瘍に対して郭清術施行.2002年左耳下腺全摘出術・ChT施行.頭蓋底に腫瘍再発し2004年2月 ChT・RT施行した.右迷走神経麻痺と舌骨及び甲状軟骨の癒着による喉頭挙上不全に基づく食道入口部の開大不良のため嚥下障害を生じたため,7月16日PTを開始した.頸部可動域改善とメンデルソン手技により2週間で誤嚥量が減少した.しかし、経口摂取可能量は本人の期待以下であったため嚥下訓練を中止し,方針変更となった.
【考察】
今回,頭頸部腫瘍術後の嚥下障害例に対してPT介入の機会を得た.3例とも頸部可動域改善が嚥下動態を改善させ,誤嚥量の減少に至った.このような症例に対するPTは,間接訓練として関節可動域訓練における頸部と胸部の訓練が有効であると報告されている.嚥下障害の評価としては,VFやVEが有用である.体位や姿勢による嚥下動態の変化を即時に評価でき,検査時に同席すれば試行的に体位や姿勢の検討が可能である.さらに,その場で医師,STと検査所見を検討すれば,役割分担と短期的な目標を共同で作成することができ,PT介入に際して有用であった.