抄録
【はじめに】
脳卒中片麻痺患者における大腿骨頚部骨折は、自立生活に影響を与える重大な合併症である。脳卒中患者は、麻痺側への転倒の危険性と麻痺側の骨密度の低下により、大腿骨頚部骨折の危険性が増大する。L.Jorgensenらは、脳卒中発症後2ヶ月における歩行能力が、骨密度の低下に影響を与えることを報告している。しかし、発症後長期間が経過した慢性脳卒中片麻痺患者を対象とした研究は少ない。そこで今回、慢性脳卒中片麻痺患者を対象に麻痺側と非麻痺側の骨密度を測定し移動能力別に検討したので報告する。
【対象・方法】
対象は、脳卒中片麻痺患者48名(男性26名・女性22名、平均68±9歳、Barthel Index75.0±18.9点)とした。発症期間は5~273ヶ月であった。このうち、屋内の移動手段として歩行を利用している歩行可能群24名(男性16名・女性8名、平均68±8歳、Barthel Index 86.5±10.3点)、車いすを移動手段としている歩行不可群24名(男性10名・女性14名、平均69±10歳、Barthel Index63.5±18.8点)に群分けを行った。
骨密度は、超音波骨評価装置(アロカ社製AOS-100)を用いて両側の踵部で測定した。測定結果は、同性・同年齢の平均値との比較値であるZスコア(%)で表した。検討項目は、移動能力別の麻痺側と非麻痺側の骨密度比較と、歩行可能群と歩行不可群において骨密度差(非麻痺側骨密度-麻痺側骨密度)を比較し、さらに発症期間と両側の骨密度の関係についても検討した。統計処理には、t-検定とピアソンの相関係数を用いた。
【結果】
男女別・移動能力別の骨密度比較では、女性の歩行不可群において麻痺側(78.4±6.0%)が非麻痺側(83.0±7.8%)よりも有意に低い値を示した(p<0.05)。しかし、女性の歩行可能群と男性の歩行可能群・歩行不可群では有意な差を認めなかった。男女別の歩行可能群と歩行不可群における骨密度差の比較では、歩行不可群で骨密度差が大きくなる傾向であった。発症期間と骨密度の関係は麻痺側と非麻痺側ともに有意な関係を認めなかった。
【考察】
慢性脳卒中片麻痺患者において、男女別・移動能力別に麻痺側と非麻痺側の骨密度について検討した。女性は閉経後に起こる女性ホルモンの減少により、男性に比べ骨密度の維持に不利な状況があることが知られている。今回の結果では、女性の歩行不可群のみに麻痺側と非麻痺側の間に差が認められ、さらに、発症期間と骨密度の間には有意な関係を認めなかった。このことから、女性脳卒中片麻痺患者では発症期間に関係なく、日常生活における移動能力が、麻痺側と非麻痺側の骨密度に影響を与えることが示唆された。以上のことから、骨密度の観点からも慢性脳卒中片麻痺患者の荷重負荷の重要性を再確認した。