理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 182
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骨・関節系理学療法
秋田FESローイングマシンの開発
*佐藤 峰善島田 洋一宮脇 和人巖見 武裕松永 俊樹千田 聡明畠山 和利
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抄録
【目的】
ローイング運動は下肢、上肢、体幹の筋を使ったストロークが必要であり、反復的で、心臓血管系および筋骨格系の持久力トレーニングに優れていることが知られている。さらに機能的電気刺激(FES)を併用すれば、脊髄損傷者にとっても安全で、心臓血管系の死亡リスクを軽減させる効果などが期待されている。本研究の目的は、安全で効果的なリハビリ運動を行うことのできる独自のローイングマシンを開発することである。
【方法】
1)ローイングマシンの製作
FESを用いて高齢者や対麻痺者の下肢筋群を積極的に使わせるというコンセプトに基づき、市販のマシンをベースにして、フライホイールによる運動負荷とした。移乗時には座面は車椅子から移乗しやすい高さとし、シートレールは床面と水平にした。座席部分に背もたれを取り付け、座面の高さは約30cm、シートレールの勾配を4°とした。FES装置として2チャンネルの搬送中周波刺激装置を用い、大腿四頭筋の運動点に表面電極を設けた。また、被験者自身が手元で刺激をコントロールするために、マシンのハンドルバーへスイッチを取り付けた。電気刺激は開始姿勢の時期にスイッチを押すことによって始め、下肢が最終伸展に至るまで押し続け、上肢の pull phaseまで続けた。上肢のpull終了後、スイッチを解除し、被験者は腕を前に出して完全屈曲の位置へ復帰し、再びストロークが始まった。計測機器として床反力計を足受に設置し、VICON140を用いて体表に設置したマーカーの3次元位置を記録した。
2)動作解析   
ローイングの実験条件は、FESなし、FESありとし、21歳の男性がボランティアとして参加した。FESローイングにおいては対麻痺を想定し、膝関節伸展終了後pull phaseを開始し、recovery phaseにおいては下肢を脱力させた。ローイング運動を運動学的に計測し、モデル計算により解析した。力学モデルは2次元の4リンクモデルとし、動力学的に足、膝、股の関節モーメントを算出した。
【結果および考察】通常ローイングにおいては、上肢運動と下肢運動が同時に開始し、ハンドルとシートが同時にflexed ready positionに戻る調和のとれたローイング運動となった。一方、FESローイングにおいては運動開始からpull phase終了までの時間差が大きくなった。また、recovery phaseにおいては、傾斜に対する制動力を欠いた動きがみられることがあった。関節モーメントにおいては、pull phase終了後flexed ready positionに至る時点で最大膝伸展モーメントを示した。FESの有無による比較では、関節モーメントと可動範囲に大きな違いはみられなかった。結果より、車椅子利用者に対してFESを使用する際には、姿勢の安定性に配慮する必要があると考えられた。
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© 2006 日本理学療法士協会
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