理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 343
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骨・関節系理学療法
腰部脊柱管狭窄症の術後アンケート調査
*太田 信也新保 健次清水 啓史黒川 正夫陳 宗雅
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抄録
【目的】
 腰部脊柱管狭窄症(以下LCS)は歩行障害が主訴となることが多く、術後リハビリテーションにおいても移動能力改善が主な目的となる。そこで今回、LCS術後の移動能力が術前と比較し改善されているかと、術前後での痛み、しびれ、動作能力、活動範囲の相関関係を明らかにするために術後6ヵ月以上経過した症例に対しアンケート調査を行い検討した。
【方法】
 当院にて2002年10月から2005年1月の間にLCSの診断をされ手術を行い術後6ヶ月以上経過したのは33症例であった。合併症により著しく当院プロトコールから逸脱した4例を除いた29症例に対して郵送でのアンケート調査を実施した。回答を得た22症例を対象とした。性別は男性11名、女性11名、平均年齢は70歳(52~82歳)であった。調査時の平均術後経過期間は20.9ヵ月であった。調査項目は4項目であり各項目で術前、現在別に質問し、項目別に点数化した。アンケート内容は、1:生活範囲(1点.寝たきり 2点.屋内移動程度 3点.近隣の移動程度 4点.公共交通機関利用)、2:移動能力(1点.歩行不能 2点.伝い歩き 3点.押し車歩行 4点.杖歩行 5点.独歩)、3:JOA scoreの日常生活動作(以下ADL)7項目(14点)、4:腰痛・下肢痛・しびれについての0~100mmのVisual Analog Scale(以下VAS)とした。そして、各項目で術前、現在の点数を比較し、また項目間の相関関係を調べた。統計学的検討はウィルコクソン符号付順位和検定、スピアマン順位相関係数検定を用い5%未満を有意差ありとして判定した。
【結果】
 生活範囲の術前平均は3.8点、現在4.9点、移動能力の術前は2.9点、現在3.6点、ADLの術前は6.4点、現在は10.0点、VAS腰痛の術前は81.0mm、現在29.1mm、VAS下肢痛の術前は71.0mm、現在34.3mm、VASしびれの術前は84.8mm、現在29.0mmであった。全項目において有意差(p<0.05)を認めた。術前での相関関係は生活範囲と移動能力、移動能力とADLに有意差(p<0.05)を認めた。現在の相関関係は移動能力とADL、ADLとVAS腰痛、ADLとVAS下肢痛、ADLとVASしびれに有意差(p<0.05)を認め、術前と現在では相関関係が異なった。
【考察及びまとめ】
 LCS術後6ヵ月以上経過した症例で移動能力が術前に比較し改善していることが明らかとなった。また術前は移動能力と生活範囲に、現在は痛み、しびれとADLに相関を認めた。これらより術後6ヵ月以上経過後に痛み、痺れはADL障害の因子となりえるが生活範囲への影響は少なく、痛み、しびれの程度に関わらず生活範囲拡大という社会参加がなされている症例が多い。急性期リハビリテーションでは在宅復帰に向けた動作獲得だけでなく痛み、痺れに対するADL上での注意点、患者指導が重要であると考えた。
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© 2006 日本理学療法士協会
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