抄録
【目的】
介護保険制度が開始され障害者の自立支援が叫ばれる中、近年介護保険該当者のみでなく地域で生活している虚弱高齢者などを対象とした「介護予防事業」の展開が急速に進んでいる。今回我々は平成17年8月~11月までの3ヶ月間「転倒・骨折予防教室」に関わり、その中で理学療法士(以下PT)の役割、今後の課題について検討したので報告する。
【教室内容】
沖縄県U市において平成17年8月~11月までの3ヶ月間、膝痛・腰痛を主訴とした地域高齢者15名(男性2名、女性13名、平均年齢74.2±6.1歳)を対象に1)運動の習慣化2)自己での健康管理の意識付けを目的とし、PT2名、市職員(看護師)4名、保健師1名の計7名で週1回の転倒骨折予防教室を実施した。受講者の効果判定として身体機能面は握力、Timed up & go test、10m最大歩行時間、FFD、最大一歩幅、片脚立位時間、30秒間椅子からの立ち上がりテストの7項目を測定、また問診により痛み、自己効力感の聴取をそれぞれ初期、中間、最終の3回実施。実際の教室の運営に関しては健康管理の意識付けとしてa.自動血圧計や健康手帳を用いての血圧管理b.休憩中の水分補給促しの徹底c.講話を通して健康管理の正しい知識を身に付けるd.休憩中などを通して個別で生活習慣の指導を行うといった工夫を積極的に取り入れるよう心がけた。運動の習慣化に関してはa.ホームプログラムのパンフレットを独自に作成し受講者へ配布し指導。b.受講者個人の体操カードを作成しチェックしてもらうcレクリエーション的要素を含む運動を取り入れることで楽しさを知ってもらうd.グループワークを通して自己の目標設定を行うe.教室の初期・中間・最終にて目標設定の確認も含めた個別面談を取り入れることで受講者の目標をより明確にするといった取り組みを行った。更にこれらを実施するにあたりスタッフ間での共通認識を持つ為毎回教室終了後スタッフミーティングを実施、教室運営に当たってのマニュアル作成を行った。
【効果判定】
体力測定の結果は7項目全てにおいて維持または向上が見られていたが、有意差はTimed up & go Test、最大一歩幅の2項目のみにとどまった。これは体力測定の方法がスタッフ間で詳細部分の共通認識が不十分であったことが考えられ、今後はマニュアルを通して方法の統一化を徹底していくことが課題として挙げられた。
【まとめ】
今回の教室を通して介護予防事業におけるPTの今後の課題は個別指導として関わるのみでなく専門性を生かし、1)楽しみを含めた集団体操を通して運動の楽しさを理解させる2)教室全体の運営を含めたコーディネーター的役割を担うことが今後、必要不可欠な視点になってくるのではないかと思われた。