理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1238
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理学療法基礎系
段階的目標設定がリーチ動作時の静的姿勢制御に及ぼす影響について
*前田 吉樹石本 貴徳北村 俊英小寺 正人末吉 勝則安藤 啓司
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抄録
【目的】リーチ動作の反復練習で、到達姿勢の足関節背屈角度が増加すると共に重心動揺が減少すると報告されている。今回は段階的課題が静的姿勢制御に及ぼす影響について、直接目標まで向かうリーチ練習と目標到達の中間点で静止してから到達する練習で比較を行ったので報告する。
【対象】日常生活に支障のない男性4名、女性5名の計9名(平均年齢24.3±2.23歳、平均身長160.6±11.36cm、平均体重51.7±11.12kg)を対象とした。被験者には全て研究の目的を説明し、同意を得た上で計測を行った。
【方法】被験者は重心動揺計(アニマ社製)上で、右肩関節90度屈曲、肩甲骨最大前方突出位から、踵部が浮かない状態で第3中手骨頭を最大限に前に押し出してリーチをするように指示した。また、右の膝関節裂隙、腓骨外果、第五中足骨に印を付け到達姿勢を撮影し、各印を繋いだ線の成す角を足関節の角度として算出した。最大リーチ距離の90%地点で10秒間の保持を5回反復する課題(直接的課題)と最大リーチ距離の50%地点で5秒間静止した後、最大リーチ距離の90%地点で10秒間の保持を5回反復する課題(段階的課題)を行った。2課題は最低4日間を空け全被験者に無作為に実施した。重心動揺計においては各90%地点における総軌跡長と矩形面積を求め、1回目の開始肢位と各回到達肢位間での足圧中心前方偏位の差を足長で除し%足圧中心移動距離を求めた。統計解析は課題間の差(課題要因)と 各1回目と5回目の差(練習要因)とで二元配置分散分析を行い、5%未満を統計学的有意とした。
【結果】足関節角度において、開始肢位の角度は119.4°±3.71°であった。また直接的課題においては1回目117.5±4.31°、5回目119.9±3.56°であった。段階的課題においては1回目122.2±4.33°、5回目125.5±4.18°であった。2要因間に交互作用は認めず、要因の効果では練習・課題要因ともに統計学的有意差を認めた(P<0.05)。その他の変数において交互作用、各要因間に違いを認めなかった。
【考察】段階的な目標設定では、より足関節背屈角度が減少した保持姿勢を呈した。また両課題ともに5回の反復練習後その傾向が強くなった。足関節背屈角度が減少した原因の一つとして、今回が最大リーチ動作であった事で、体幹や骨盤帯を回旋させる代償動作の影響が考えられた。しかし今回は矢状面のみの評価のため、前額面、水平面の変化が課題要因と練習要因にどの程度影響を与えたかの検証は困難である。今後は、回旋動作による代償を除いた検証と、前額面と水平面を含めた重心移動並びに角度の変化を検証する必要があると考えた。
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© 2007 日本理学療法士協会
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