理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1344
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理学療法基礎系
周期的伸張刺激による筋萎縮抑制効果は摂食タイミングで変わる
西出 圭吾辻 一真片岡 亮人縣 信秀宮津 真寿美村上 太郎河上 敬介
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抄録

【目的】不活動により骨格筋は萎縮する。この不活動筋に伸張刺激を加えると、筋蛋白質合成経路が活性化し、萎縮は抑制される。一方、レジスタンス運動直後の摂食は、運動後数時間経過してからの摂食に比べ、筋蛋白質の合成をより増大させ、運動による筋肥大効果をより向上させることが示されている。これらのことは、理学療法の臨床において、運動療法直後に摂食することにより、不活動筋の萎縮を効率よく抑制できる可能性を示している。そこで本研究では、ラットの除神経筋を用いて、周期的伸張刺激直後の摂食が筋萎縮抑制効果を向上させるかどうかを明らかにすることを目的とした。
【方法】本研究は本学医学部保健学科動物実験委員会の承認を得て行った。7週齢Wistar系雄性ラット13匹を使用し、これらのラットは12時間おきに明期、暗期となる環境下で飼育した。実験期間は3週間とした。実験開始から1週間は、1日2回、明期と暗期の最初の各1時間だけ食餌するように教育した。その後、すべてのラットの左坐骨神経に除神経術を施した。除神経翌日から2週間、徒手にて左足関節に5秒周期の他動的な背屈運動を行うことにより、ヒラメ筋に対して周期的伸張刺激を加えた。なお、この伸張刺激は暗期から明期に切り替わる時刻に、毎日、1日15分間加えた。一方、食餌は1日2回、1時間ずつ与え、Suzuki et al.(1999)を参考に、2回の食餌のうち1回目を伸張刺激直後に与える群(n=7)と、伸張刺激から4時間後に与える群(n=6)とに分けた。2回目の食餌はどちらの群も伸張刺激12時間後に与えた。なお、摂食量は毎回計測した。実験期間終了後、ラットの体重を測定し、左ヒラメ筋を採取した後、凍結横断切片を作製した。この切片にH-E染色を施し、画像解析ソフト(Scion Image)を用いて筋線維断面積を測定した。
【結果】1回目の食餌を伸張刺激直後に与えた群の筋線維断面積は923±169μm2であり、4時間後に与えた群の781±117μm2に比べ有意に大きかった(p<0.05)。なお、1日の摂食量は、伸張刺激直後に与えた群で17.1±1.8g、4時間後に与えた群で16.8±1.0gであり、有意な差はなかった。また、実験期間終了後の体重は、伸張刺激直後に与えた群で245±24g、4時間後に与えた群で242±13gであり、有意な差はなかった。
【考察】摂食タイミングが異なっても、両群の摂食量や体重は変わらなかった。しかしながら、摂食量や体重が変わらないにも関わらず、伸張刺激直後のタイミングに摂食する方が、伸張刺激による筋萎縮抑制効果が高かった。これは、摂食した蛋白質がより多く筋蛋白質合成に利用されたためであると考えられる。
【まとめ】伸張刺激直後に摂食することは、伸張刺激4時間後に摂食するよりも、伸張刺激による筋萎縮抑制に効果的であった。

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© 2008 日本理学療法士協会
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