抄録
【目的】我々は先行研究でミラーセラピーを脳卒中足関節重度麻痺者に行い,背屈機能改善に効果を得ている.しかし,ミラーセラピーを下肢に実施した報告は少なく,麻痺側背屈介助の有無による差の検証は行われていない.本研究の目的は,ミラーセラピーの効果が,麻痺肢介助の有無によって影響を受けるのかを明らかにすることである.
【対象】当院入院4週後のStroke Impairment Assessment Setの足関節の運動機能(以下,SIAS-F)が2点以下かつ指示理解良好な初発脳卒中片麻痺患者27名とし,全例に本研究参加の同意を得た.
【方法】ミラーセラピーの方法は,両膝関節屈曲60°の椅子座位で,下腿部を露出し鏡を両下肢間に非麻痺側下肢が映るように設置した.患者には鏡に映る非麻痺側下肢を注視させながら非麻痺側の背屈運動を行わせた.この時,鏡に隠れている麻痺側も同時に背屈するよう指示し,背屈運動を介助した13名(以下,介助群)と介助せず自己努力のみで行った14名(以下,自動群)の2群に入院順に分けた.背屈運動は,メトロノームに合わせ2秒に1回のペースで1日に50回を4セットで7日間,計1400回行った.1日目のミラーセラピー前(以下,開始時)と7日目のミラーセラピー後(以下,終了時)および終了時から7日後(以下,最終時)の計3回,SIAS-Fとビデオ撮影による背屈角度を評価した.撮影は両膝関節屈曲60°の椅子座位で,麻痺側外果90cm側方から行い,画像解析ソフトDART TRAINERにて最大背屈時の床面と足底面のなす角度を測定し,3試行の中央値を採用した.終了時から最終時までの1週間はミラーセラピーを行わず通常訓練のみ実施した.統計解析はノンパラメトリックを使用した.
【結果】介助群と自動群の比較で,平均年齢,性別,麻痺側,発症から開始時までの期間および開始時のSIAS-Fと背屈角度に有意差はなかったが,診断名に群間差を認めた(p<0.05).SIAS-Fの経過は, 自動群が14名中8名で改善を認め,その差は有意(p<0.05)であったが,介助群は13名中4名の改善で有意差は認められなかった.平均背屈角度は,自動群が開始時2.2°±4.1°,終了時8.6°±8.5°,最終時10.0°±9.6°,介助群が開始時0.4°±1.4°,終了時0.3°±0.8°,最終時1.3°±3.7°で自動群が介助群よりも終了時および最終時で有意に高値を示した(p<0.05).
【考察】SIAS-Fは自動群が介助群より高い割合で改善しており,背屈角度では終了時と最終時で有意差を認めたため,自動群の方が介助群よりもミラーセラピーの効果が大きいと言えた.今回の対象はSIAS-Fが2点以下の重度麻痺であるため麻痺側の背屈介助量は大きい.介助群の効果が少なかった原因として,麻痺側が介助に依存して背屈運動の自己努力が減ってしまったことと,非麻痺側の背屈運動(鏡による運動の視覚的錯覚)と介助のタイミングとの誤差が外乱として働いた可能性がある.今後は介助の適応を詳細に検討していきたい.