理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 700
会議情報

神経系理学療法
脳卒中片麻痺者の立ち上がり動作分析
立ち上がり動作とバランス能力
石間伏 彩萩原 章由北川 敦子小川 明久溝部 朋文斎藤 均金子 俊之福王寺 敦子熊木 由美子阿部 成浩渡邉 沙織尾﨑 寛前野 豊山本 澄子
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抄録
【はじめに】中重度の麻痺を呈した片麻痺者では立ち上がり動作の安定性に個人差があるが,動作の安定性を運動力学的に評価した報告は少ない.我々は安定性を定量化することで,それに関係する要因を探れると考え,動作分析で求められる重心,合成床反力作用点(COP)に着目し研究を行ってきた.第40回本学会で片麻痺者の立ち上がり動作の安定性を定量化する指標として,重心面積,重心COP面積を求め報告した.第42回の症例報告では安定していく過程で麻痺側荷重量に大きな変化は見られなかったが,重心,COPの軌跡は全体的に非麻痺側へ移動し左右変動が減少したことを報告した.
【目的】片麻痺者のバランス能力が,立ち上がり動作における運動力学的指標にどのように反映されるかを検証すること.
【方法】対象は当センター入院中の片麻痺者24例,年齢62.8±5.6歳,発症からの期間99.0±32.9日,下肢随意性はBr.stageIII10例,IV4例,Performance-Oriented Mobility Assessment(POMA:臨床的なバランス能力の評価)0~18点11例,19~24点12例,25~28点1例.研究に際して全対象者から説明による同意を得た.測定機器は三次元動作解析装置(Vicon512)と床反力計(KISTLER社製)を使用.立ち上がり動作の測定方法は上肢を使用しない自由な立ち上がりで,台の高さは下腿長とし,3~5回施行した.動作分析による運動力学的指標として,重心面積,重心COP面積,麻痺側下肢最大荷重量,水平面内の重心軌跡長,COP軌跡長,立ち上がり所要時間を算出,それぞれ平均化しPOMAとのスピアマンの順位相関を求めた.
【結果】POMAとの相関係数は相関が高い順に,重心面積0.72(p<0.01),重心COP面積0.70(p<0.01),COP軌跡長0.58(p<0.01),立ち上がり所要時間0.51(n.s.),重心軌跡長0.42(n.s.),麻痺側下肢最大荷重量0.36(n.s.)であった.重心面積,重心COP面積は他の指標と比較しPOMAとの相関が高かった.
【考察】重心面積,重心COP面積がPOMAとの相関が高いことから,これらの指標は運動力学的側面から片麻痺者のバランス能力を示していると考える.立ち上がり動作は重心が水平面上で直線的に動く課題である.重心,COPが直線的に動く場合,重心面積,重心COP面積は小さく表れるが,重心の左右変動が大きい場合,重心面積,重心COP面積は大きく表れる.片麻痺者では重心面積,重心COP面積が大きかったことから,重心の左右変動の大きさはバランス能力を示していると考える.また麻痺側最大荷重量とPOMAとの相関が低いことから,今回の対象では,立ち上がりの時の麻痺側最大荷重量は片麻痺者のバランス能力を反映していないと思われた.
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© 2008 日本理学療法士協会
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