理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 119
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骨・関節系理学療法
3次元動作解析による健常者における肩関節位置の再現能力
野村 真嗣浦辺 幸夫上田 泰之宮里 幸
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抄録
【目的】 投球動作において,肩関節外転角度の不足は投球障害の代表的な原因として考えられている.投球障害の治療は長期となる例が多く,予防が重要とされる.そこで,選手が肩関節外転角度不足を知覚できれば予防のきっかけとなるのではないかと考えた.関節角度の求心性情報である関節固有感覚は,関節運動の再現能力に重要な役割を果たしている.これまで肩関節の固有感覚機能については,他動運動や2次元での解析が多く報告されているが,肩関節は球関節であり,3次元で解析する必要がある.本研究では肩関節の自動外転動作を3次元解析し,肩関節位置の再現能力を角度誤差で提示することを目的とした.

【方法】 対象は,上肢に重篤な疾患のない健常成人60名(男性30名,女性30名,年齢21.5±1.4歳)とした.磁気センサー式3次元空間計測装置(3-SPACE Isotrak2,Polhemus)を用い,センサーを胸骨と,上腕骨に平行な木製の副子に貼付し,前腕回内外0°,肘関節屈曲90°に固定した.肩関節外転90°を開始肢位として記憶させ,検査側への視野を遮断して記憶した肢位を再現させ,肩関節外転,外旋,水平伸展角度を計測した.開始肢位との角度誤差の絶対値(絶対誤差:AE)を算出した.肩関節の各角度間の相関にピアソンの相関係数を用いて検定した.危険率5%未満を有意とした.なお,本研究はH大学大学院保健学研究科の倫理審査委員会の承認を得て行った.

【結果】 肩関節位置の再現角度は,外転角度88.8±4.4°,外旋角度0.7±3.9°,水平伸展角度-0.3±5.1°であり,角度誤差が負となった人数はそれぞれ外転角度では38名63%,外旋角度では28名47%,水平伸展角度では27名45%であった.また,AEは外転角度3.5±2.8°,外旋角度3.0±2.5°,水平伸展角度4.1±2.9°であった.肩関節の各角度間に有意な相関はみられなかった.

【考察】 肩関節において,運動軸が一つに固定された2次元動作にて固有感覚を測定した研究の多くが,AEは約2~5°であると報告している.本研究では運動軸を固定しない3次元動作で肩関節の自動外転動作をさせ,先行研究と比較しても信頼性のある結果が得られた.今回,肩関節外転動作には外転角度のみでなく,外旋角度や水平伸展角度にも同時に角度誤差が生じることが示された.複雑な運動であるスポーツ活動では,意図した通りに関節位置を再現する能力は非常に重要であり,今回の結果から肩関節固有感覚を3次元動作で測定する必要性があると考える.また,肩関節は複合関節であり,関節位置の再現能力には各関節が相互に影響する可能性がある.角度誤差が生じる原因を明らかにするため,肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節とを分けて分析する必要があり,疲労などが及ぼす影響も含めて今後の課題としたい.

【まとめ】 肩関節外転動作を3次元解析し,肩関節外転,外旋,水平伸展角度の再現性を調べた.肩関節運動の再現能力が角度誤差から提示できた.
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© 2008 日本理学療法士協会
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