理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 134
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骨・関節系理学療法
当センターにおける大腿骨頚部骨折受傷者の歩行能力の変化
大島 豊
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抄録
【目的】高齢者の転倒による大腿骨頚部骨折(以下、FNF)は寝たきりの原因として、社会問題となっている。しかし、クリティカルパス導入により、早期荷重・歩行練習が行われ、入院期間短縮が図られ、早期退院が可能になっている。今回、当センターの訪問理学・作業療法(以下、訪問療法)、通所リハビリ(以下、通所リハ)にて理学・作業療法(以下、療法)を施行したFNF受傷者の歩行能力の変化について調査した。
【対象および方法】2002年10月1日~2007年10月31日に当センターにて療法を施行したFNF受傷者15例(男性2例、女性13例、平均年齢77.9歳)を対象とした。療法施行形態は訪問10例、通所5例である。既往疾患は脳血管障害7例、整形疾患3例、認知症2例、なし3例である。方法は、自宅退院から開始までの期間、開始時から終了時及び現在の歩行能力(屋内・外)、FNF受傷前と終了時及び現在の歩行能力、自宅退院から開始までの期間と受傷前歩行能力獲得までの期間について比較検討した。
【結果】自宅退院から開始までの期間は1~2週間53.3%、3~4週間20%、9~10週6.7%、それ以上が20%であった。開始時の屋内歩行は可能80%、不可20%、屋外歩行は可能40%、不可60%であった。終了時及び現在の屋内歩行は可能93.3%、不可6.7%、屋外歩行は可能60%、不可40%であった。FNF受傷前の屋内歩行は可能93.3%、不可6.4%、屋外歩行は可能80%、不可20%であった。FNF受傷前と終了時及び現在の歩行能力の比較は受傷前の歩行能力へ到達60%、未到達20%、変化なし20%であった。到達例にて自宅退院から開始までの期間別に到達までの平均期間をみると1週間で2.2ヶ月、2週間で7.7ヶ月、4週間で6ヶ月、8週間で9ヶ月、20週間で3ヶ月であった。到達例での平均期間は5.3ヶ月であった。
【考察】歩行能力の変化については、開始時と比較し、屋内歩行可能例が13.3%増加、屋外歩行可能例が20%増加し、屋内・外歩行ともに改善が見られている。また、FNF受傷前の歩行能力への到達が60%、未到達3例では、屋内歩行可能(介助1例、監視1例、自立1例)、屋外歩行不可であった。変化なしでは、2例は開始時よりFNF受傷前の歩行能力に到達、1例はFNF受傷前より屋内外共に歩行不可であったことより、FNF受傷前と同等の在宅生活を送れる例が多いことが分かる。また、自宅退院から開始までの期間別に到達までの平均期間をみると1週間で2.2ヶ月と最も短いが、全体的にばらつきがみられる。既往疾患や受傷前の歩行能力との比較が必要である。寝たきりの原因と考えられるFNFであるが、訪問療法・通所リハの早期介入により、高齢者や脳血管障害などの既往歴があるFNF受傷者であっても、受傷前の歩行能力を獲得できることが示唆された。
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© 2008 日本理学療法士協会
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