抄録
【はじめに】
入谷式固有筋評価とは、歩行分析を行い股関節の屈筋(腸腰筋)・伸筋(大殿筋)、膝関節の屈筋(ハムストリングス)・伸筋(大腿四頭筋)をそれぞれ収縮させ、効率性の良い歩行を目指し大腿骨・脛骨の誘導方向を決定する評価方法である。
膝関節疾患患者で可動域制限、しゃがみこみ時痛を呈している症例に対し、入谷式固有筋評価の結果に基づきProprioceptive Neuromuscular Facilitation(以下PNF)を施行し症状の改善が得られたので以下に報告する。
【対象】
当院外来受診患者で膝関節疾患を有し、本研究の趣旨に同意を得た29例、33膝を対象とした。内訳は変形性膝関節症が25例29膝(grade1~4)で膝蓋大腿関節症が2例2膝で内側半月板損傷が2例2膝であった。安静背臥位での関節運動で疼痛が出現する25膝(以下ROM群)、安静背臥位では疼痛が出現せず、しゃがみ込み時に疼痛が出現する8膝(以下squatting群)の2群に分けた。ROM群の平均年齢は70.5歳で男性8名、女性17名であり、squatting群の平均年齢は45.6歳で男性3名、女性5名であった。
【方法】
歩行分析を通し入谷式固有筋評価を行い大腿骨・脛骨の誘導方向を決定した。ROM群の測定方法は、伸展はactiveにて、屈曲はend feelを確認するためにpassiveにて測定し、第3者が東大式ゴニオメーターを用いて行った。Squatting群の測定肢位は、両上肢を胸部の前で組み股関節内外転0度の肢位で行いVisual Analogue Scale (以下VAS)にて評価した。先の入谷式固有筋評価の結果を基にPNFを施行し再びROM、VASを測定した。アプローチ前後でのROM、VASの変化をROM群はt-検定を行い、Squatting群はWilcoxsonの順位和検定を行い、優位水準を5%以下とした。
【結果】
ROM群は伸展可動域25例中16例に改善が見られ、屈曲可動域は25例中23例に改善が見られた。(伸展、屈曲ともにp<0.01)
squatting群は8例中8例にVASの低下が見られた。(p<0.01)
【考察】
今回の結果から、入谷式固有筋評価は膝関節疾患における治療方針を決定づける有効な評価手段だと示唆される。可動域制限が改善した要因として、大腿骨と脛骨の位置関係が改善したものやPNFにより筋緊張の改善が得られたものと考えられる。しゃがみ込み時痛が改善した要因として、筋機能の向上として、ダイナミックスタビリティーの改善やダイナミックでのアライメントの改善が得られたものと考えられる。しかし大腿骨・脛骨の誘導のみでは痛みが必ずしもとれるというわけではなく、側方での安定性や体幹などを含めたさらなる運動連鎖も加味したアプローチが必要とも感じた。