抄録
【はじめに】内側大腿膝蓋靭帯(以下MPFL)再建術は近年、良好な術後成績が散見されるが、術後理学療法(以下PT)は確立されていない。今回、反復性膝蓋骨脱臼に対し、MPFL再建術が施行された症例のPTを内側広筋(以下VM)萎縮、下肢アライメントに着目し展開した。そこで経過をまとめ、PTについて若干の考察を加え報告する。
【症例】15歳女性。身長149cm、体重58kg、BMI26.1%。診断名は右反復性膝蓋骨脱臼。主訴は膝蓋骨不安定感。現病歴は約2年前から右反復性膝蓋骨脱臼があるも、保存療法で軽快。今回、バックランニング中に右膝蓋骨脱臼を受傷。当院整形外科受診し、MPFL再建術の適応となった。
【手術方法】移植腱は半腱様筋腱を使用。膝関節屈曲120°で再建靭帯の固定性良好、その他関節障害なし。
【術前評価】レントゲン所見は大腿骨外顆の軽度形成不全あるも異常所見なし。Patella apprehension sign陽性、関節可動域(以下ROM)は右股関節内旋50°、右膝関節屈曲145°、伸展10°、下腿外旋30°。徒手筋力検査(以下MMT)は、右中殿筋、大殿筋、内転筋、股関節外旋筋(以下Gm.・GM.・Add. ・rot.)4、大腿四頭筋、ハムストリングス(以下Quad.・Ham.)4-であった。右大腿周径は膝蓋骨直上から10cmにて52.5cmと左より-2cm。右片脚立位にて、右大腿骨内旋、膝関節外反・外旋の増大、踵骨回内が生じ、脛骨粗面と膝蓋骨内側に疼痛が生じた。
【理学療法経過】手術翌日からPT、膝装具固定にて荷重開始。術後1週後、股関節外転外旋運動、patella settingなどの筋力増強運動を中心にPT実施。装具なしで独歩可。右膝関節ROMは、屈曲90°、伸展0°。MMTは、Gm.・GM.・Add.・rot.4-、Quad.・Ham.2であった。右大腿周径は47.5cmと左より-3.5cm。Patella setting時、VMの収縮は触知不可で大腿骨内旋、膝蓋骨外側偏位著明。術後3週後に退院し、外来でPT継続。退院時、右膝関節ROMは、屈曲120°、伸展5°。MMTは、Gm.・GM.・Add.・rot.4+、Quad.・Ham.3+。術後6週後、ROMは右膝関節屈曲135°。ハーフスクワットなど荷重位運動を追加したが、大腿骨内旋、膝関節外反・外旋し、移植腱・膝蓋骨骨孔部に運動時痛が出現した。これに対して膝装具着用と外側ウェッジ、二軸アーチパッドを挿入した。術後12週目には正座可、Patella setting時のVMの収縮が触知でき、膝蓋骨外側偏位減少。軽いランニングでは疼痛なし。MMTはQuad.・Ham.4、大腿周径は51cmと左より-1cmまで回復し、術前評価時のアライメント不良は軽減した。
【考察】反復性膝蓋骨脱臼の要因には、VM萎縮、下肢アライメント不良があるが、本症例でも術後6週後にこれらが原因と考えられる疼痛が出現した。そこで、足挿板や装具を用い、生活活動動作での下肢アライメントを調節したところ除痛がはかれ、VMの収縮を促通することにつながったと推察する。