抄録
【はじめに】地域支援事業における「運動器の機能向上教室」は広く行われており、効果が報告されている。当院リハビリテーション科も平成18年度より教室を開始した。このような教室の今後の展開としては、より効果が得られるための教室・運動内容を明確にしていく必要性がある。よって今回、これからの教室運営をより効果のあるものとするために、教室で実施した「運動内容の違い」に着目して介入効果を検討し、考察を加え、ここに報告する。
【方法】対象はS町在住の特定高齢者で、H18年度(以下A群)・H19年度(以下B群)で各8名、平均年齢は71.13±7.5歳と80.38±5.5歳であった。教室は週1回(約1時間)、期間を3ヶ月間とした。運動内容は、A群は下肢中心のセラバンド運動、B群は全身バランス運動(6種類)を行った。運動機能評価として、TUG・片脚立位・FR・FBS・10m最大歩行・棒落下テスト・長坐位前屈、FESを開始・終了時に計測した。統計処理はWilcoxon testを用い、両群の開始・最終時の運動機能を比較し、また、各群内で運動介入効果の検討を行った。
【結果】A/B群間の開始時測定値に有意差が認められた評価項目は、TUG(15.64秒/9.23秒)、片脚立位(7.21秒/14.11秒)、10m最大歩行(11.33秒/7.90秒)であった。最終時ではTUG(13.01秒/8.46秒)、FBS(49点/54点)であった。運動機能は、A群ではTUG(右)・FR(左右)・FES・長坐位前屈で有意差が認められ、B群では右TUG・左棒落下テスト・長坐位前屈で有意差が認められた(p<0.05)。
【考察】両群ともに運動機能の変化が認められたが、その項目は異なる結果となり、またB群でA群ほどの変化は認められなかった。この原因として、各群対象者の運動機能の相違が考えられる。A群で行ったセラバンド運動は集中的な筋力改善が得られやすく、対象者に対して適度な負荷量であったため、運動機能の変化に繋がった。しかし、B群で行った全身バランス運動では、対象者に対する負荷量としては少なく、運動機能の変化に繋がりにくかったと考える。また、A/B群間の開始・最終時測定値それぞれに有意差が認められた評価項目の違いからも、各アプローチが異なった形で運動機能への変化に影響を与えていることも伺える。つまり、運動内容の違いによる運動機能への影響が考えられる。よって、より効果的な運動機能の変化を促すためには、評価結果から対象者の運動機能を把握し、それに合わせた内容を選ぶことが重要と考える。今後は、対象者に最適な運動内容を提供できるよう、評価内容を吟味し、集中的な筋力改善を目的とした運動と全身を使っていく運動の双方からアプローチを含め、継続的に楽しめる運動内容を提供していきたいと考える。