理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 761
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生活環境支援系理学療法
脳卒中の退院後ADLはどう変化しているか
回復期リハビリ病棟退院後6カ月後の調査
荒尾 雅文横森 亜美香中島 由美恵渡辺 要一今村 安秀
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キーワード: 脳卒中, FIM, ADL
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抄録
【目的】我々は平成14年~15年に回復期リハビリ病棟のADL向上効果の報告を行ってきた。今回の研究はそれをふまえ、獲得したADLが在宅で継続できているかを調査することを目的とする。
【対象・方法】対象はH17年4月~H18年3月までの期間に自宅退院された脳卒中症例83名である。入院時の情報は担当療法士の評価、退院後の情報はFIM質問紙を使用し退院後6ヶ月時に郵送法にて評価した。対象者には研究趣旨の説明を行い、同意を得た方のみ研究に参加していただいた。統計解析はSPSS(version11.5)を使用した。
【結果】対象は83名であり、そのうち評価を回収できたのは40名であった(回収率48.2%)。FIM運動項目平均は退院時77.6点、退院後78.6点であり退院前後での得点で有意差はみられなかった。また各項目でも退院後有意に低下している項目はなかった。しかし対象者間でのばらつきがみられたため、FIM運動項目が低下しているものを低下群とし分類すると、17人(43%)のFIM総合得点平均が低下していた。またその中で有意に低下が見られる下位項目は更衣下半身であった。
また主な移動手段を見ると、退院時車椅子だったもの19名中16名が退院後歩行になっていた。車椅子から歩行に移動手段を変更した群は退院後の転倒、家族負担が有意に大きかった。
【考察】結果から退院後は入院中獲得したADLがほぼ保たれていることが分かった。これは先行研究の結果と同様であった。しかし対象者の中にはADL低下群も存在しており、特に低下は更衣の下衣に見られた。在宅では着替え等の動作の介助を過度に家族に依存してしまう場合が多く、できる能力をもっていてもしていない場合が多い。この結果からは入院中から家族に参加してもらうADL訓練の必要性が示唆される。また移動能力が車椅子から歩行に変更している症例が多く認められた。この原因として退院後は在宅での狭い環境という要因や本人の歩きたいという強い意思により、移動手段を車椅子で設定しても、現実には伝い歩きや家族の介助・見守り等で歩くことが多いことが推察できる。しかし移動手段が変更しているケースは、転倒が多くさらに家族の介護負担感が多かった。この結果からは回復期リハ病棟での入院中に在宅を想定し、病棟でベッド周辺は歩行で自立させることや、訪問リハが退院直後から関わり、実際場面での歩行練習や環境設定をきめ細かく行なうことで転倒や家族の介護負担を減らすことの重要性が示唆された。
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© 2008 日本理学療法士協会
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