主催: 社団法人日本理学療法士協会
【はじめに】下肢では、通常、利き足・軸足の存在が知られており、日常生活場面での双方の使い分けは習慣化されている様に感じる.その為、片脚の機能を失った場合にその動作に与える影響は大きいと考える.臨床場面において、特に歩き始めに転倒する患者様を多く経験し、利き足・軸足の機能が大きく影響しているものと考える.そこで今回、先行研究として健常者において利き足と軸足が動作に及ぼす影響について比較検討を行って多少の知見を得たので報告する.
【対象と方法】当院に在職している健常者22名(男性:6名、女性:16名 平均年齢:31±10.2歳)とした.実験に先立ち、本研究の目的等を口頭にて説明した後、実験参加への同意を得た.検査項目は、軸足・利き足のそれぞれから開始した際の1.初歩の長さ2.10m歩行速度3.歩数4.静的荷重量にした.また、アンケートにおいて利き足・軸足を抽出した.1から3の項目においては、対応のあるT-検定を使用し比較検討を行った.
【結果】アンケートにより全員、利き足は右、軸足は左で、荷重量では、右より左が大きい者が全体の50%を占めた.初歩では左から開始した方が有意に歩幅が大きくなった(P<0.01).速度では、左から開始した方が有意に速かった(P<0.01).歩数では、左から開始した方が有意に少なかった(P<0.5).
【考察】前原は、利き足・軸足の定義として、利き足とは、動作をする足であり器用さが要求され、より多くの注意力を集めている方の足(機能足)、軸足とは体重を支え姿勢の維持を役目とし多くは反射的にコントロールされている足(支持足)としている.初歩では、左から開始した方が右から開始した方よりも有位に大きくなったのは、利き足が支持する足としての機能を十分に果たすことが出来ない為で、その後の歩数にも影響しているものと示唆された.速度では、左から開始した方が右から開始した方よりも有意に速かったのは、通常の歩行パターンを崩されたことで、動作の中で通常の歩行パターンへの修正を早く行おうとする為であると示唆された.以上のことから、利き足・軸足の機能が動作に何らかの影響を与えているものと推測される.今後は、片脚の機能を失った方での比較検討をすすめていきたい.