理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-502
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内部障害系理学療法
糖尿病患者の運動療法が運動による急性効果に与える因子の考察
中立 大樹岡田 卓也井上 桂松田 尚人松並 峰子村田 和也永田 裕章山本 将令
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抄録
【目的】当院では教育入院で運動療法の実習を行い、急性効果の確認を運動習慣の動機付けとしている.しかし、運動後血糖値が上昇してしまう症例もあり、指導に苦慮することもある.そこで、急性効果に影響を与える因子を検討したので報告する.
【対象と方法】対象は2005/1/17~2007/12/27の教育入院終了者190例(男性118例、女性72例、平均年齢57.4±10.3歳)とした.方法は対象をインスリン治療群80例(INS)、経口薬群98例(OHA)、薬物無し群12例(ND)の3群に分けた.さらに運動前血糖値に比べ運動後血糖値が低下した群(以下低下群)と上昇した群(以下上昇群)の2群に分けた.内訳はINS(低下群:上昇群=73:7) OHA(72:26)ND(12:0)である.実習は入院10日目昼食後約70分より1980mの歩行を行った.まず、全例で血糖値差と患者背景、血液情報、運動時情報(運動前後の血糖値とその差‹以下血糖値差›、脈拍数‹安静時と運動時›)の関係について検討した.3群間の患者背景、血液情報、運動時情報の差について比較した.3群間の上昇群と低下群の分布を、また運動前血糖値を5段階に分類し(100以下、100~150、151~200、201~250、251以上:mg/dl)上昇群と低下群の分布を、3群で別々に比較し、統計学的検定を行った.
【結果】運動前血糖値と血糖値差には正の相関が見られた.運動前後の血糖値(mg/dl)は運動前から運動後にINS212.4±84.4から165.0±69.7、OHA166.2±50.2から143.4±47.1、ND163.8±41.7から113.9±41.1と低下した.3群間の患者背景・血液情報・運動時情報の差では運動前血糖はOHAに比べINSで高く、運動後血糖はNDに比べINSで高かった.血糖値差はINS47.4±38.4、OHA22.8±32.5、ND49.8±30.2でINS、NDに比べOHAで低かった.3群間での上昇群と低下群の分布はINSに血糖値低下者が多かった.また運動前血糖値別での上昇群と低下群の分布では、INSの上昇者は151以上では0例であり、OHAの上昇者では151以上でも認められ、100以下では両群とも血糖値上昇者が多発した.
【考察】運動前血糖と血糖値差は正の相関を示し、運動前血糖高値は血糖値をよく低下させる要因と考えられる.またINSではOHAに比べ大きく血糖値が低下し、血糖低下群がOHAより多いこと、INSでは運動前血糖値151以上の群で血糖値上昇者が認められなかったこと等から、インスリン作用も血糖低下の大きな要因であると考える.血糖上昇群の内訳は、INS、OHAとも運動前血糖値100以下で多発し、運動前血糖低値の者は運動後血糖値が上昇しやすい傾向にあった.これには、低血糖に対する血糖上昇ホルモン等による作用も考えられるが、その検討は今後の課題としたい.
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© 2009 日本理学療法士協会
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