理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O2-134
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一般演題(口述)
頚椎椎弓形成術術後の上肢筋力低下に対するリハビリテーション
澄川 智子中井 英人荒本 久美子長谷川 美欧川上 紀明小原 徹哉辻 太一
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抄録
【目的】頚椎症性脊髄症(CSM)に対する手術療法には前方法と後方法があり、後方法における術後合併症として上肢筋力低下が知られ、いわゆるC5麻痺としては3〜10%前後という発生率の報告があり、筋力低下は神経根障害、術中操作による影響や脊髄障害といった種々の原因によると考えうる.当院においても術後上肢筋力がMMT2以下に低下する症例もあり、リハビリテーション(RH)を進める上で難渋することを経験する.またこの合併症に関する予後は良好との報告が散見されるが、筋力低下残存例についても知られている.そこで今回我々は上肢筋力低下発生率およびC5麻痺発生率と予後について調査し若干の知見を得たので報告するとともに、当院での頚椎椎弓形成術(LP)術後にみられるMMT2となったC5麻痺に対するRHを示す.【方法】対象は2003年4月〜2008年4月に当院にてLPを施行したCSM患者288例(男性174名、女性114名、平均年齢64.6歳)とした.術後上肢筋力低下はMMT3以下になったもの、または術前から3以下であったものは1段階以上低下したものと定義し、上肢筋力低下の発生数、部位、時期について調査した.そして筋力回復をMMT4への回復、または術前から3以下であったものは術前と同段階への回復と定義し、回復時期についても調査した.上肢筋力低下合併患者に対する術後RHは通常のLP術後RHと同様に進め、加えて上肢筋力増強運動(MSE)を実施した.また頚椎前弯増強を防ぐために、臥床時には高めの枕を使用することや、頚部良肢位保持として顎を引くことを指導した.術後MMT2となったC5麻痺に対するMSEとして重要となるのは三角筋と上腕二頭筋で、三角筋にはまず肩関節の安定化を目的とした肩腱板運動を指導した.肘および前腕を支えできる限り重力を除いた状態で肩内外旋運動、壁に対して垂直に立ち近い距離から始め徐々に伸ばして手背で壁を押す肩外転運動、テーブル上に上肢を乗せてできる限り重力を除いた状態でスライディングをする肩甲帯前方突出運動を行わせた.続いてテーブル上で上肢をバスタオル等に乗せ滑り易い状態にして肩水平内外転運動を行わせた.次に立位または座位にて介助で肩屈曲し保持した後ゆっくり戻す遠心性収縮運動を同じ屈曲角度で繰り返させた.数回保持可能であることを目安に屈曲30°→45°→60°→180°→90°と段階的に進め、180°からは肩外転方向も行わせた.そして屈曲60°保持可能となった段階で背臥位にて上肢全体の屈伸運動を開始し、目標物をぶら下げそれに触れるように意識して動作を行わせることでより効果的に運動を指導できた.上腕二頭筋にはまずテーブル上に上肢を乗せてできる限り重力を除いた状態で肘関節屈伸運動を行わせた.次に重力下での肘関節屈曲運動を肩関節内旋位から開始し、肩関節を中間位および外旋位と順に進めさせた.【説明と同意】本研究におけるデータ使用に関して説明し、同意を得られたものについて調査した.【結果】上肢筋力低下発生数は39例51部位(男性31名、女性8名、平均年齢64.9歳)、発生率は13.5%で、C5麻痺のみでは16例5.6%(男性12名、女性4名、平均年齢66.7歳)であった.発生部位は三角筋25例、上腕二頭筋8例、上腕三頭筋13例、手関節伸筋群1例、指関節伸筋群4例であり、同一髄節で複数部位に発生した例もあった.発生時期としてベッド上安静時は1例2.6%、離床当日または翌日は15例38.4%で、1週以内に31例79.4%の発生を認め、全例3週以内に発生していた.筋力回復時期として発生から1ヶ月以内では21例53.8%、2ヶ月以内では6例15.4%、数ヶ月経過後では8例20.5%あり、平均3.5ヶ月で回復した.しかし筋力に変化はみられなかったものと、変化はみられたが回復まで至らなかったものは1例ずつあった.【考察】従来の報告と同様に術後発生した上肢筋力低下はおおよそ良好な経過であった.諸家により回復時期は平均2.6ヶ月から、中には1年以上とする報告をされている.また永田らは発生例への対策としてMSEの施行を述べたものの、効果に関する記述はみられなかった.今回は約70%で2ヶ月以内に回復したが、数ヶ月経過後に回復したものもあり、長期に経過をみていく必要性を感じた.三角筋筋力4→2および3→2へ低下し筋力回復に至らなかった2例は、原因として運動への理解度が低かったこと、年齢が高く筋力回復を得にくかったと考えられた.今回回復の定義としたMMT4へは回復したものの術前状態へ戻らなかった例もみられた.藤巻らによれば上肢MMT4は日常生活に支障のないレベルとし、日常生活に問題がなくなったのでMSEを止めたのではないかと推察した.【理学療法学研究としての意義】LP術後に上肢筋力低下を発生した症例に関して、積極的なMSEを施行することで早期に筋力は回復することが分かった.また筋力に応じた適切なMSEを指導し実施することで早期に筋力は回復したことからPTアプローチの重要性を感じた.
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© 2010 日本理学療法士協会
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