理学療法学Supplement
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PI1-224
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ポスター発表(一般)
腰部脊柱管狭窄症に対するマッケンジー法の効果の検討
腰部脊柱管狭窄症に対するマッケンジー法の可能性
飯澤 剛柴田 恵理子金子 翔拓
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抄録

【目的】近年,マッケンジー法(以下MDT)は腰痛治療に対して注目を集めているが,まだ日本国内ではその効果の検討の報告はあまり行われていない.MDTは,腰痛や両下肢の痺れなどの評価で得られた症状の変化から自己管理を行う運動を決定する.そのために,伸展は行うべきではないとされる腰部脊柱管狭窄症に対しても,伸展運動を自己管理するための運動として処方する可能性がある.現在の腰部脊柱管狭窄症における自己管理の運動療法は,筋力増強訓練を中心としたプログラムが中心であり,症状に対する反応を管理するものはあまり見受けられない.よって我々は,腰部脊柱管狭窄症と医師が診断した対象者に,MDTで評価し自己管理する運動を処方した結果から,腰部脊柱管狭窄症の症状に対する変化と効果を検討することにした.
【方法】対象者は,レントゲンとMRI,症状から医師に腰部脊柱管狭窄症と診断されMDTで評価し,さらに約1カ月間で5回までを基準とし,最終評価が得られた30例(男性21例,女性9例)とした.
方法は,MDTによる症状の評価を行い,MDTによる分類であるDerangement Syndrome,Dysfunction Syndrome,Posture Syndrome,結論不明の4つに大別した.分類後は,在宅でMDTに従った自己管理をそれぞれに行ってもらった.評価時に自己管理の判断が困難であった場合は,最も反応が良好であった方向を第1選択とした.5回までの受診で自己管理する体幹の運動方向を変更した場合は,最終評価前の運動方向を自己管理した方向とした.さらに初期評価時と最終評価時に日本整形外科学会腰痛疾患治療成績判定基準(以下JOAスコア)とVisual Analog Scale(以下VAS)を採点した.初期評価時と最終評価時で得られた結果について,JOAスコア,VASを検討した.統計学的分析は得られた結果に対してそれぞれ,対応のあるt検定を用いて行った.
【説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に基づき,対象者に事前に今回の研究についての十分な説明を行い,同意を得た上で行った.
【結果】対象者の平均年齢は68.17±11.77歳であった.MDT分類はDerangement Syndromeが17例,結論不明が13例であった.尚,Derangement Syndromeの対象者に行ってもらった体幹運動の方向は,屈曲が3例,伸展が6例,回旋が8例であった.Derangement Syndrome群のJOAスコアは初期評価時18.46点であり,最終評価時は27.80点であった.結論不明群のJOAスコアは初期評価時20.59点であり,最終評価時は21.32点であった.Derangement Syndrome群のVASは初期評価時6.6cmであり,最終評価時は2.9cmであった.結論不明群のVASは初期評価時4.9cmであり,最終評価時は4.6cmであった.Derangement Syndrome群はJOAスコア,VASのどちらも有意差を認めたが(P<.05),結論不明群は有意差が認められなかった.
【考察】今回の研究では,腰部脊柱管狭窄症と診断された分類がDerangement Syndrome17例と結論不明13例であった.これは,腰部脊柱管狭窄症の場合,MDTが有効である対象者は限られているが,症状を改善できる運動方向が認められた場合は改善することが可能であると考えられた.
今回の結果では,改善された運動方向が体幹伸展であった対象者は6例いた.これは,腰部脊柱管狭窄症が認められても,必ずしも体幹伸展動作が症状を誘発し悪化させるわけではないと考えられた.
【理学療法学研究の意義】本研究は,腰部脊柱管狭窄症の症状に対する保存療法として,症状に対して反応を診るMDTで評価し自己管理を行うことの効果を検討したことで,腰部脊柱管狭窄症の保存療法に対して1つのアプローチの可能性を示した.

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© 2011 日本理学療法士協会
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