理学療法学Supplement
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PI1-225
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ポスター発表(一般)
骨盤帯へのサポートベルトの使用が下肢機能に及ぼす効果
木村 七恵鶯 春夫田岡 祐二田野 聡高岡 克宜
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キーワード: 骨盤帯, ベルト, 下肢機能
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抄録

【目的】
Kabatらは、徒手による触圧刺激にて固有受容器を促通し機能改善を図る治療を体系づけており、臨床で広く応用されている。そこで本研究は骨盤帯に対し、その触圧刺激を骨盤帯サポートベルト(以下、ベルト)で代用できるのではないかと考え、ベルトによる骨盤帯への触圧刺激の有無が、健常成人の下肢機能に及ぼす影響を検討した。

【方法】
対象は健常成人23名(男性14名女性9名、平均年齢28.0±8.2歳)とした。方法は、同一対象者に対して、ベルト装着なし条件(以下、N条件)と、ベルト装着あり条件(以下、B条件)とで、10m最速歩行時間(以下、10m歩行)、Timed up and go test(以下、TUG)、30秒椅子立ち上がりテスト(以下、CS-30)を条件間で日を変えてランダムに測定し、2条件間で比較検討した。ベルトは幅10cm、長さ82cm、材質はポリエステルゴム製の市販されているものを使用し、装着位置は上前腸骨棘の頂点の水平面上を上端として、立位にて装着した。対象者間での差を極力なくすため、ベルトを締める圧は血圧計のカフにて20mmHgとした。統計学的検討にはpaired t-testを用い有意水準は5%未満とした。

【説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に基づき実施された。全対象者には、研究の趣旨および内容について十分な説明を行い、書面にて研究参加の同意を得てから研究を実施した。

【結果】
N条件にて10m歩行は4.3±0.8 sec、TUGは4.8±0.7sec、CS-30は30.4±7.1回。B条件にて10m歩行は4.0±0.8 sec、TUGは4.7±0.6sec、CS-30は31.7±6.8回であった。B条件はN条件に比べ、10m歩行とTUGにおいて有意に速く(p<0.05)、CS-30においても有意に回数の増大を認めた(p<0.05)。また、B条件での測定中、被験者の中には10m歩行とTUGでは「動きやすくなった」、「足が軽くなった」、CS-30では「立ちやすい」、「疲れにくい」等の主観的な変化がある者もみられた。

【考察】
ベルトにより変化した骨盤帯周囲の環境として、上前腸骨棘以下10cmの軟部組織に対する触圧刺激、動作時においては、軟部組織を介した間欠的な股関節・仙腸関節への刺激、ベルトの素材の性質上、ゴムの弾性による各関節運動に対する抵抗等が考えられる。本研究の結果より、骨盤帯へのベルト使用という身体環境の変化が動作時のスピードや安定性、運動感に即時的な効果を示しており、ベルト使用により骨盤帯周囲組織の固有受容器へ刺激、促通につながったことが動的パフォーマンスに影響したと考えられる。

【理学療法学研究としての意義】
我々の治療・運動処方の中で、より良好な身体機能状態下でアプローチが行われることが望ましく、また動きやすい身体機能状態は日常生活における活動性の増加につながると考えられる。骨盤帯へのベルト使用という身体への環境設定はその一要因になっていくと考えられ、本研究の臨床的有用性は高いと考える。今後、装着時間や部位、締める圧など妥当な適応条件の他、実際の患者や高齢者への適応など、臨床応用へ向けては検討事項が多数あるため、さらに検討を重ねていきたい。

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© 2011 日本理学療法士協会
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