抄録
【目的】
我々は第45回日本理学療法学術大会において、介護支援専門員(以下ケアマネ)を対象とした訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)の利用状況に関するアンケート調査結果を報告した。その調査ではケアマネは訪問リハに対して「申し込みをしても断られる」「長期間待たされる」等の意見が多く、訪問リハは必要だが他のサービスにて代用する傾向があった。また、地域の訪問リハのマンパワー不足を指摘するケアマネも多かった。本研究ではケアマネの前職種が訪問リハの利用状況に及ぼす影響を検討した。
【方法】
対象は神奈川県横浜市鶴見区の居宅介護支援事業所53件(以下 事業所)に勤務しているケアマネ179名とした。調査項目は前職種、実務経験年数、給付実績、訪問リハ提供量の充足感、訪問リハをサービスに組み込んでいる件数、訪問リハの利用歴、訪問リハを必要と考えているが利用していない件数、訪問リハの利用件数を給付実績数で除した利用率とした。ケアマネの前職種が看護師およびリハ職種の場合は医療系ケアマネ、介護福祉士および社会福祉士等の場合は介護・福祉系ケアマネとした2群に分類し、訪問リハの利用状況を比較した。
【説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき調査内容の説明を行い同意が得られた事業所にアンケートを郵送した。
【結果】
事業所数52件、ケアマネ数178名、有効回答数137、無効回答数0、有効回答率77.0%であった。医療系ケアマネは実務経験年数が平均5.6±2.7年、給付実績が平均19.6±11.6件、訪問リハの充足感は58.0%が不十分、訪問リハ利用件数は平均1.5±2.0件、訪問リハを利用した経験があるケアマネは80.0%、訪問リハの必要性はあるが利用していない件数は平均1.4±2.6件、利用率は平均7.0±0.1%、訪問リハの利用が給付実績の1割未満となる割合は72.3%となった。
介護・福祉系のケアマネは実務経験年数が平均3.9±2.7年、給付実績が平均24.9±11.5件、訪問リハの充足感は53.5%が不十分、訪問リハ利用件数は平均2.0±2.0件、訪問リハを利用した経験があるケアマネは91.9%、訪問リハの必要性はあるが利用していない件数は平均1.2±2.6件、利用率は平均9.57±0.1%、訪問リハの利用が給付実績の1割未満となる割合は65.2%であった。
【考察】
医療系ケアマネおよび介護・福祉系ケアマネの半数以上は訪問リハの充足感が不十分とし、訪問リハのマンパワー不足が示唆された。また、医療系ケアマネは介護・福祉系ケアマネに比べて訪問リハの利用が少ない傾向であり、特に医療系ケアマネに対して訪問リハの広報の必要性が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
地域のニーズに十分に応えられる訪問リハを展開するためには、他職種との連携が重要であり、ケアマネとの連携は特に重要である。また、ケアマネが訪問リハにどのような認識を持って利用者を評価して必要性を判断しているのかを知ることは必要である。しかし、ケアマネを対象としたアンケート調査の研究は少ない。ケアマネの前職種が訪問リハの利用状況に及ぼす影響を検討した本研究は、訪問リハの発展に貢献すると考える。