理学療法学Supplement
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: OS3-071
会議情報

専門領域別口述発表
教員主導型臨床実習の取り組み(第3報)
アンケートからみた症例研究レポートにおける学生の負担度と満足度の検討
羽田 晋也権藤 要平木 治朗
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】平成20年度より当院では、新たな試みとして養成校教員が毎日来院し、臨床実習指導者(以下、SV)と共に臨床現場で直接学生を指導する教員主導型の臨床実習を導入している。第44・45回本学術大会において我々は、教員が介入することで(1)学生の安心感が生まれ、2人一組で症例を担当することで相談しながら能動的に取り組むことができる、(2)学生の資質や能力、SVの能力に関わらず課題に対し円滑に取り組める実習環境の提供と高い満足度が得られたことを報告した。今回、症例研究レポートにおける学生の負担度と満足度を調査し、教員主導型と学生1人に対して2名のSVが付く従来型の臨床実習を比較したので検討を加え報告する。
【方法】2008年4月から2010年10月に当院で臨床実習を行い終了した学生32名に対し、アンケートにて症例研究レポートにおける学生の負担度と満足度を調査した。有効回答数は31名(教員主導型10名、従来型21名)であった。学生の負担度は、(非常に大きい、大きい、普通、小さい、非常に小さい、わからない)、学生の満足度は、(非常に満足、満足、普通、不満、非常に不満、わからない)ともに6項目からの選択とした。
【説明と同意】学生へのアンケートは、今後の学生指導をより発展させていくための資料とすること、学会等で報告する旨を十分に説明し同意を得た上で行った。また、学生個人を特定できないよう無記名で行い、性別と年齢も問わないものとした。なお、本研究は当院の倫理委員会にて承認を受けたものである。
【結果】症例研究レポートにおける学生の負担度は、教員主導型の非常に大きい(10%)、大きい(10%)、普通(60%)、小さい(20%)に対し、従来型では非常に大きい(14.3%)、大きい(38.1%)、普通(38.1%)、小さい(9.5%)であった。学生の満足度は、教員主導型の非常に満足(20%)、満足(50%)、普通(30%)に対し、従来型では非常に満足(4.8%)、満足(38.1%)、普通(42.8%)、不満(4.8%)、わからない(9.5%)であった。
【考察】当院の臨床実習における特徴としては、学生への2大課題である実習開始後3~4週目の担当症例を交えた症例検討会(以下、CS)と7~8週目の症例研究発表会(以下、CC)が挙げられ、多くのスタッフと養成校教員が参加する。CSでは、症例の主要な問題点を明らかにし、ADLに結びつけるための治療を展開していく。CCでは、ただ症例の経過をまとめるだけでなく、症例の主要な問題点とADLを結びつけるためにテーマを決めてデータを収集し、動画も交えて症例の特徴をまとめるように指導していく。最終的に、CCでの発表スライドを詳しくまとめたものを症例研究レポートとしている。
アンケートの結果から、教員主導型では従来型に比べ症例研究レポートにおける学生の負担度が小さく、高い満足度が得られていた。また、従来型では満足度において割合としては低いが、不満(4.8%)・わからない(9.5%)という回答もみられた。従来型においては、SVは実習開始当初から一貫して担当症例の主要な問題点とADLを結びつけるための指導とデータ収集を行い、多くのスタッフが参加し教員も来院するCSとCCに向けて指導する労力は非常に大きい。多忙な臨床業務の傍ら、学生への指導時間を十分に確保できていないのが現実でもある。一方、教員主導型では、教員が毎日来院して担当症例の2回(教員・SV)の治療前後に1時間程度にわたる学生への指導時間を十分に確保して実技練習も交えて予習・復習を行った。教員が介入し学生の能力に応じた課題を与えることで、学生は臨床現場のみならず帰宅後の自己学習も効率よく行えたと考える。主に教員が評価と問題点の抽出、SVが治療と技術の指導を行うなかで、協同して座学と臨床を結びつける指導ができ、症例研究レポートにおいて学生の負担度が小さく、高い満足度が得られたと考える。
現在、従来型の臨床実習においては、教員へCSとCCの2回の来院を要請している。今後は、学生自らが積極的に参加して自身の成長と課題を自覚できる実習環境の提供を目指し、各養成校と協同して臨床実習の在り方を検討していきたい。
【理学療法学研究としての意義】教員主導型臨床実習では、学生の特徴を把握している教員が介入することで、症例研究レポートにおける学生の負担を軽減するだけでなく、高い満足度が得られた。近年の養成校増加に伴い、臨床現場では特に臨床実習の受け入れ依頼が増加し続けている。教員主導型と従来型の臨床実習における学生へのアンケート結果を分析することは、今後の臨床実習の在り方を検討する上で意義あるものと考える。
著者関連情報
© 2011 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top