理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
不動に伴うラットヒラメ筋のタイプI・IIIコラーゲンmRNAの動態変化
本田 祐一郎近藤 康隆佐々部 陵片岡 英樹坂本 淳哉中野 治郎沖田 実
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p. Aa0893

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抄録
【目的】 肺や肝臓など,内臓器の機能異常を惹起する病態の一つに線維化があり,その要因は炎症などを発端としたコラーゲンの過剰増生とされている.そして,近年の分子生物学的研究手法の発展により,線維化の際に過剰増生するコラーゲンの分子種も明らかになってきており,具体的にはタイプI・IIIコラーゲンがタンパクレベルならびにmRNAレベルにおいて増加することが示されている.一方,先行研究ではギプスなどによる関節固定で骨格筋が不動状態に曝されると,コラーゲン含有量が増加するとともに,それを主要構成成分とする筋周膜や筋内膜には肥厚が認められ,これらの変化は骨格筋の線維化の徴候を示唆するとともに,筋性拘縮の病態の一つとされている.しかし,これまでは骨格筋の線維化の際にタイプI・IIIコラーゲンがどのような動態を示すのかは明らかになっていなかった.そこで,演者らはこれまで不動化したラットヒラメ筋の組織切片を蛍光免疫染色に供し,その画像解析からタイプI・IIIコラーゲンの動態を検索してきた.その結果,筋周膜,筋内膜ともに不動によってタイプI・IIIコラーゲンが増加し,筋内膜に限っては不動4週まで不動期間に準拠してタイプIコラーゲンが増加することが明らかとなった(第45・46回日本理学療法学術大会).しかし,これまでの検索はタンパクレベルであり,しかも画像解析に基づく半定量分析にすぎないため,不動に伴う骨格筋のタイプI・IIIコラーゲンの動態を結論づけるには課題が残っていた.そこで,本研究では骨格筋内のタイプI・IIIコラーゲンの動態をmRNAレベルで検索し,不動に伴う線維化,さらには筋性拘縮のメカニズムについて検討した.【方法】 実験動物には8週齢のWistar系雄性ラット50匹を用い,両側足関節を最大底屈位で1・2・4・8・12週間ギプスで不動化する不動群(各5匹,計25匹)と同期間,通常飼育する対照群(各5匹,計25匹)に振り分けた.各不動期間終了後は麻酔下で左側ヒラメ筋を摘出し,RNA laterに浸漬した後に以下の手順でReverse Transcription Polymerase Chain Reaction(RT-PCR)法に供し,タイプI・IIIコラーゲンmRNAの発現量を定量化した.具体的には,RNeasy Fibrous Tissue Mini Kit(QIAGEN)を使用して筋試料中のRNAを抽出し,QuantiTect Reverse Transcription kit(QIAGEN)を用いてcomplimentary DNA(cDNA)を作製した.cDNAはサーマルサイクラーによる増幅反応を実施した後に電気泳動を行い,発光したバンド像をコンピュータに取り込んだ.そして,画像解析ソフトを用いてバンドのdensityを計測し,その値をinternal controlの値で除したものをデータとして採用した.なお,internal controlにはGAPDHを用いた.【説明と同意】 本実験は長崎大学動物実験指針に準じ,長崎大学先導生命科学研究支援センター・動物実験施設で実施した.【結果】 各不動期間とも不動群のタイプI・IIIコラーゲンmRNAの発現量は対照群に比べ有意に高値を示した.また,不動群のタイプIコラーゲンmRNAの発現量は不動1・2週に比べ4・8・12週は有意に高値を示したが,不動4・8・12週の間には有意差は認められなかった.一方,不動群のタイプIIIコラーゲンmRNAの発現量は各不動期間で有意差は認められなかった.【考察】 今回の結果から、各不動期間とも不動群のタイプI・IIIコラーゲンmRNAの発現量は対照群よりも有意に高値を示し,これは先に報告したタイプI・IIIコラーゲンの蛍光免疫染色像の画像解析によって得られたタンパクレベルでの結果と一致していた.つまり,骨格筋を不動状態に曝すことでタイプI・IIIコラーゲンの増加が惹起されると結論づけることができ,このような変化が不動に伴う骨格筋の線維化のメカニズムの一つといえよう。次に,不動群のタイプIコラーゲンmRNAの発現量は不動1・2週に比べ不動4・8・12週は有意に高値を示し,先に報告した自験例でも筋内膜に限っては不動4週まで不動期間に準拠してタイプIコラーゲンが増加することが明らかとなっている.そして,先行研究によれば不動期間の延長に伴って骨格筋の伸張性低下,すなわち筋性拘縮が顕著になるとされており,生体内においてタイプIコラーゲンは硬度が要求される組織で含有率が高いことはよく知られていることである.つまり,今回認められた不動期間の違いによるタイプIコラーゲンmRNAの発現量の変化は筋性拘縮の進行に関与していると推察される.【理学療法学研究としての意義】 本研究はラットヒラメ筋のタイプI・IIIコラーゲンの動態が不動によって変化するか否かをmRNAレベルで検索した基礎研究であり,その成果は不動に伴う骨格筋の線維化のメカニズム,さらには筋性拘縮の進行のメカニズムの解明につながるものであり,理学療法学研究としても意義深いものと考える.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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