理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
SDA法を用いた健常者の片脚立位姿勢制御の評価
鈴木 陽介澤田 智紀星 文彦金子 誠喜
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キーワード: 姿勢制御, 片脚立位, SDA法
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p. Ab0652

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抄録
【はじめに、目的】 転倒を予防することは重要な課題であるが,姿勢制御能と転倒の関連メカニズムは十分に明らかとなっていない。姿勢制御能の静的バランス評価として重心動揺検査が行われているが,その評価項目は足圧中心(COP)の総軌跡長や動揺面積など一定時間の積分値の評価にとどまっており,時間的な変化の特性に着目した研究は少ない。そこで本研究はCOPの軌跡について時間的パラメータを考慮して解析を行うSDA法を用いて静止立位と片脚立位開始時における姿勢制御を検討した。【方法】 対象は,計測に支障をきたすような既往歴がない健常成人19名(平均年齢27±2歳,23~41歳)であった。被験者に裸足で開眼および閉眼の2条件で両脚立位および片脚立位をとらせ,その時のCOPの軌跡を計測した。重心動揺計測はWin-Pod(MediCapteures社製)を使用し,足圧中心を重心の床への投影点とみなして,サンプリング周波数10Hzで30秒間計測した。片脚立位はボールを蹴る側の片脚とし,胸の前で腕を組んだ状態で合図とともに片脚立位をとらせた。各施行は休憩をはさみながら1施行ずつ行わせ,開眼時は2m前方のマーカーを注視するよう指示した。解析は重心動揺計から得られるCOPの軌跡から0.1秒間隔で0.1秒から8.0秒までの変位量を算出して平均二乗変位(Δr2)のSDプロットを求め,最小二乗法から境界点座標および短時間領域,長時間領域それぞれの傾き(拡散係数DrsおよびDrl)を算出した。片脚立位では対側足尖が離れた直後から解析を行った。  統計は4条件における境界点の座標(Δt,(Δr2))および拡散係数DrsおよびDrlについてKruskal-Wallis検定を用い,有意差がみられたものに対しSteel-Dwassの多重比較検定を行った。【倫理的配慮、説明と同意】 被験者には事前に研究の主旨を十分に説明し,書面にて同意が得られた上で実験を行った。尚,実験はヘルシンキ宣言および個人情報保護に配慮した上で行った。【結果】 対象者19名のうち,閉眼片脚立位保持時間が10秒に満たなかった1名を解析対象から除外した。SDプロットでは実験条件に問わず,両脚立位では1~2秒の間,片脚立位では1秒前後で短時間領域と長時間領域を区分する境界点が示された。境界点までの時間は,開眼および閉眼で有意差はみられなかったが,片脚立位では有意に早くなった(P < 0.01)。境界点におけるΔr2は,両脚と比較して片脚立位で有意に大きく(P < 0.01),両脚立位では開眼と閉眼で差はみられなかったが,片脚立位では開眼と閉眼の間に有意差が認められた(P < 0.01)。Drsは片脚立位をとることによって有意に大きくなり(P < 0.01),片脚立位では開眼と閉眼の間に有意差がみられた(P < 0.01)。Drlは両脚立位と開眼片脚立位の間に有意差が認められた(P < 0.05)。【考察】 Collinsらは短時間および長時間領域はそれぞれ開ループと閉ループに基づく制御を反映しているとしており,片脚立位では境界点までの時間間隔が短くなったことから,閉ループ制御をより活性化していると考えられる。Drsや境界点のΔr2から,片脚立位では短時間領域におけるCOPがより速く変位しており,確率論的に不安定な状態になったと言える。静止立位の制御は主として足関節によって制御され,Drsの増加は不安定性の増大に対する下腿筋群の制御の結果を示すとの報告もあることから,片脚立位では足関節周囲筋群による足関節制御の活性化による確率的活動を示唆しているものと考えられる。片脚立位では視覚からのフィードバックへの依存が大きく,開ループ制御による不安定な制御を行うとともに,筋や足底皮膚からの固有感覚情報や前庭系からのフィードバック制御を同時に活性化することによって足底面内にCOPを制御しているものと考えられる。【理学療法学研究としての意義】 静的バランス能力の評価はバランス評価の一つとして重要であり,SD解析は従来のパラメータに加え,姿勢制御の戦略を分析できる可能性があることから新たな指標の一つになりうることが示されたと考える。また,本研究結果は,転倒傾向が強い疾患や高齢者で検討するうえで重要な基礎データとなる。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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