理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
ハンドヘルドダイナモメーターを用いた等尺性股関節外転筋力測定における信頼性の検討
─機器と被検者の身体の固定に検者が直接関わらない方法─
今井 智也平塚 千恵國枝 洋太三木 啓嗣
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p. Ab1075

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抄録
【はじめに、目的】 股関節外転筋力の測定は,股関節疾患のみならず様々な疾患において理学療法評価として実施する機会が多く,簡易な筋力測定装置としてハンドヘルドダイナモメーター(以下HHD)を用いることがある. 諸家の報告では,検者が機器を支持した場合には検者の力の強さが測定値に影響することが明らかとなっている.そのため,測定の信頼性を高めるためにHHDを壁やベルトに固定し使用している.また,同様の理由で測定時の被検者の代償動作を少なくするために,背臥位で股関節の外転筋力を測定する場合は骨盤や非測定側の大腿遠位部もしくは下腿遠位部をベルトで固定し検者が測定に直接関わらない方法が用いられている. これまでの報告は,測定時にHHDもしくは被検者の身体の固定のいずれかに検者が直接関わっているものがほとんどであり,我々が渉猟した限りではいずれも検者が直接関わらない方法での信頼性は検討されていなかった. 本研究の目的は,HHDを用いた等尺性股関節外転筋力測定において測定時に機器と被検者の身体の固定に検者が直接関わらない方法の信頼性を検討することである.【方法】 対象は整形外科疾患の既往のない健常成人女性10名(20股関節).平均年齢は30.8歳(範囲;23-40歳),身長158.6±3.8cm,体重50.9±3.8kg(平均値±標準偏差)であった. HHDはアニマ社製等尺性筋力計(μTas F-1)を用いた.被検者はベッドに背臥位になり,検者によって骨盤および非測定側の大腿遠位部を非伸縮性のベルトでベッドに固定された.HHDは,センサーパッドを被検者の膝関節直上の大腿遠位外側部にあたるよう設置し,動かない壁に木製装置にて固定した.課題は最大努力での左右の股関節外転筋等尺性収縮とした.課題実施前に,骨盤の浮き上がりおよび非測定側の股関節外転が堅固に制限されていることを確認し,最大下努力にて1回練習を行った.各課題における1回の等尺性収縮は5秒間とし,その間の最高値を最大筋力値とした.施行回数は2回とし平均値を測定値とした.各施行の間には1分間の休息を設けた.左右の測定順は無作為に決定し課題の間には5分間の休息を設けた.測定は検者A(臨床経験13年目の男性理学療法士)と検者B(臨床経験2年目の女性理学療法士)が実施した.一方の検者による測定後,30分以上の休息を設け他方の検者による測定を実施した.検者A・Bの測定順は無作為とした.さらに検者A・Bによる測定は5日以上間隔をあけて後日に同様の手順で再測定を行った.測定値の読み取りは他方の検者が行いバイアスの排除を行った. 統計学的検討は,検者内信頼性および検者間信頼性を級内相関係数(以下ICC)を用い検討した.つまり,検者Aが行った初回測定と再測定の2回の測定においてICC(1,1)を算出し検者内信頼性を検討した.また,検者Aと検者Bが行った測定においてICC(2,1)を算出し検者間信頼性を検討した.解析はSPSS Ver.19を用いた.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究における説明は書面および口頭で実験内容を十分に説明し,同意書に署名をもらうことで同意の確認を行った.得られたデータは匿名化し個人情が特定できないよう配慮した.【結果】 検者Aの測定によるICC(1,1)は0.92で95%信頼区間は0.82-0.97(下限値-上限値)であった.ICC(2,1)は0.94で95%信頼区間は0.86-0.98であった.【考察】 ICCの判断基準として一般的に0.7以上を求められる.本研究においてICC(1,1)およびICC(2,1)はともに0.9以上であり高い信頼性が得られた.本研究の特徴である測定時に機器と被検者の身体の固定に検者が関わらないことが測定において高い信頼性を得られた要因と考える.また,単一測定による検者間信頼性を示すICC(2,1)の結果から臨床経験年数が異なる男女間でも高い信頼性を得られることが確認できたため,同様の設定・手順で実施された測定値は検者が異なっても比較検討することが可能と考える.【理学療法学研究としての意義】 本研究により,HHDを用いて等尺性股関節外転筋力を測定する場合,測定時に機器と被検者の身体の固定に検者が直接関わらない方法を用いることで高い信頼性を得られることが明らかとなった.臨床上,筋力を評価する機会は多く,本研究の結果は患者への客観的な評価のフィードバックや理学療法の効果判定において有益であると考える.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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