理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
通所サービス利用者の歩行能力と身体活動能力の特性について
─虚弱高齢者と脳卒中片麻痺患者における比較─
中江 秀幸相馬 正之坂上 尚穂山崎 健太郎武田 賢二
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p. Ab1090

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抄録
【はじめに、目的】 介護保険制度の在宅サービスであるディサービスやディケア利用者に対する身体機能維持のための介入は重要であり、歩行能力や身体活動量の維持や向上がその目標となる。身体活動量の向上には身体機能的限界や動作遂行時の安全性・快適性の限界を向上させる、あるいは身体機能や動作遂行の安全性・快適性に合った身体活動量に近づける方法が考えられる。そこで今回、身体機能の指標を最大歩行速度、至適歩行速度、歩行効率とし、身体活動能力との関連性について虚弱高齢者と脳卒中片麻痺患者を比較し、その特性について検討した。【方法】 ディサービス利用中の虚弱高齢者(以下、虚弱高齢群)15名と、ディケア利用中の脳卒中片麻痺患者(以下、片麻痺群)15名の計30名を対象とした。虚弱高齢群は年齢83.3±4.8歳、片麻痺群は年齢69.1±7.0歳、発症からの期間は35.4±22.5ヶ月、下肢Br stage3が8名、stage4が6名、stage5が1名であった。なお、両群ともに要支援1から要介護3の認定者であった。杖や装具の使用は問わず3分間以上の連続歩行が可能な者で測定に支障を来たす骨関節疾患や循環器疾患を有する者は除外した。10m最大歩行速度(10m最大;m/min)、10m至適歩行速度(10m至適;m/min)、至適速度で3分間歩行した歩行速度(3min至適;m/min)、Physiological Cost Index(PCI値;beats/m)を求めて歩行能力の指標とした。なお、杖や装具使用は通常の歩行形態とした。身体活動能力の指標に機能的自立度評価(FIM;点)、運動強度別に遂行時間を問う国際標準化身体活動質問表short versionによる消費カロリー(IPAQ;kcal)を用いた。【倫理的配慮、説明と同意】 ヘルシンキ宣言を尊重するように企画し、研究内容および公表の有無と形式について書面にて同意を得た上で進めた。また、研究同意の撤回がいつでも可能なことを説明し、分析は統計的に処理し、個人が特定されないように配慮した。【結果】 測定結果は(虚弱高齢群/片麻痺群)、10m最大63.7±13.1/35.9±6.6m/min、10m至適46.8±7.3/28.4±6.3m/min、3min至適45.4±9.5/26.2±5.4m/min、PCI値0.37±0.24/0.57±0.21beats/m、FIM117.9±6.2/105.9±6.3点、IPAQ 15.5±2.7/16.6±1.8kcalであり、群間差異(non paired t-test) はIPAQ以外の変数間で有意差を認めた。3つの歩行速度変数は、変数間に相関関係を認め(pearson積率相関係数)、一元配置分散分析で有意差を認め、多重比較検定では10m至適と3min至適間以外に有意差を認めた(両群とも同様)。PCI値との関連性は、虚弱高齢群で10m最大、10m至適と相関関係を認めが、片麻痺群では認められなかった。身体活動能力の変数とは、片麻痺群のPCI 値とFIMのみ相関関係(r=-0.581,p<0.05)を認めた。【考察】 虚弱高齢群と片麻痺群の測定結果の比較から最大および至適歩行速度や歩行効率などの歩行能力、およびADL能力が片麻痺群よりも虚弱高齢群の方が高いが、身体活動量(IPAQ)には差がないことが示唆された。10mの短距離的な最大および至適歩行速度と3分間の至適歩行速度は、虚弱高齢群と片麻痺群ともに相関関係を認め、10m最大や10m至適が3分間の連続歩行時の速度を反映することが明らかとなった。PCI値と歩行速度変数との関連性から、虚弱高齢群では10mという短距離的な最大歩行速度や至適歩行速度が歩行効率も反映するが、片麻痺群では歩行速度と歩行効率の関連性が低いことが示された。また、PCI値は片麻痺群のFIMとのみ相関関係を認め、脳卒中患者において歩行効率とADL能力の関連性が示された。しかし、虚弱高齢者は歩行効率とADL能力との関連性はなく、身体活動量との関連性も低いことが示された。10m最大に対する10m至適の百分率を算出したところ、虚弱高齢群ではIPAQと、片麻痺群ではPCI値と相関関係を認めた。【理学療法学研究としての意義】 歩行の距離的、持久力的、効率的指標は重要であるが、評価するには利用者への身体的負担が大きい。10mの距離で測定できる最大や至適歩行速度変数の重要性、脳卒中片麻痺患者の歩行効率はADL能力と関連あるが、虚弱高齢者のADL能力や身体活動量は歩行の速度や効率性以外の要因が関わっている可能性について検討する資料となる。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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