理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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専門領域 口述
我々が考案した座位有酸素運動プログラムにおける糖・脂肪代謝の検証-運動強度と身体使用部位に着目して-
山原 純弓田 真梨子伊藤 健一
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p. Ae0088

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抄録
【はじめに、目的】 近年,疾病全体に占める生活習慣病の割合が増加しており,死亡原因の約6割,国民医療費の約3割を占めている.生活習慣病は,内臓脂肪型肥満を共通要因とした高血糖,脂質異常症,高血圧を呈する基礎病態であり,肥満を予防,解消することが重要である. 肥満に対する運動療法は,一般的に歩行などの有酸素運動が処方される.しかし,肥満と変形性膝関節症(以下膝OA)には密接な関わりがあり,膝関疼痛のために歩行が困難となることが多い.そこで, 我々は膝OAに配慮した座位での有酸素運動プログラムを開発し,検証を行っいる. 本研究の目的は,開発した座位有酸素運動プログラムにおいて,運動強度,身体使用部位の違いが糖・脂肪代謝に与える影響について検証し,運動強度,プログラム内容を検討することである.【方法】 対象は健常女子大学生20名である. 対象者は無作為に運動テンポ80 beats/min(80 bpm)群と160 beats/min(160 bpm)群に割付け, この2群に対して運動プログラムを実施し, 呼気ガス分析装置を用いて検証を行った. 運動プログラムは椅子上で行い, rest, warm-up(臀部交互挙上2分), exercise(運動プログラム3セット, 10分×3 ), cool-down(臀部交互挙上2分)で構成されており, 1セットはA~Dの4つのセクションからなる. 1セット10分であり, Aは下肢を中心とした運動, Bは体幹を中心とした運動, Cは上肢を中心とした運動, Dは各セクションから抽出し組み合わせた運動である. 測定項目は運動プログラム実施中の脂肪酸化量, 糖酸化量, 代謝量, 代謝当量である. これらの値はIndirect Calorimetryにより分時酸素摂取量, 分時炭酸ガス排泄量を用いて算出した. データは2,3セット目の値を5秒毎に抽出して平均したものを用いた. 対象者の身体的特性の比較には対応のないt検定, 同テンポ内における各セクション(A~C)の測定項目の比較には反復測定一元配置分散分析とBonferroniによる多重比較, 各セクションの測定項目のテンポ間比較にはMann-Whitney検定を行った. 有意水準は危険率5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は大阪府立大学総合リハビリテーション学部倫理審査委員会の承認を得ている(承認番号2010P10). ヘルシンキ宣言に基づき, 対象者には本研究の主旨と方法, 危険性の有無について十分に説明した上で, 書面による参加同意を得た.【結果】 対象者の身体的特徴では年齢のみ両群間に有意差を認めた(80bpm:20.5±0.9歳,160bpm:21.7±1.4歳)(p<0.05). セクション間の比較にて, 脂肪酸化量は, 80bpmにおいてAセクションがB・Cセクションより有意に高値を示し(A:5.7±1.5,B:3.2±1.7,C:3.1±1.5 g/h)(p<0.01), 160bpmにおいてAセクションはCセクションより有意に高値を示した(A:2.6±2.0,B:2.4±1.7,C:0.8±1.2 mg/h)(p<0.05).糖酸化量は, 80bpm, 160bpmにおいて各セクション間に有意差を認めなかった. 代謝量は, 80bpmにおいて各セクション間に有意差を認め(A:138.9±14.7,B:124.4±16.4,C:119.3±14.5 kcal/h)(p<0.01), 160bpmにおいてCセクションはA・Bセクションより有意に低値を示した(A:191.8±29.7,B:189.3±33.0,C:159.2±26.8 kcal/h)(p<0.01). 代謝当量は, 80bpmにおいて各セクション間に有意差を認め(A:2.54±0.23,B:2.24±0.23,C:2.20±0.22)(p<0.01). 160bpmにおいてCセクションはA・Bセクションより有意に低値を示した(A:3.54±0.35,B:3.51±0.40,C:2.97±0.33)(p<0.01). テンポ間の比較にて, 脂肪酸化量は, A・Cセクションにおいて80bpmが160bpmより有意に高値を示した(p<0.01). 糖酸化量, 代謝量, 代謝当量は, 各セクションにおいて160bpmが80bpmより有意に高値を示した(p<0.01).【考察】 脂肪酸化量,代謝量,代謝当量において,AセクションがCセクションより高値を示した理由として,運動中に上肢よりも下肢を中心に使用することで,運動に参加している筋群が大きく,多くのエネルギー消費が行われていたと考える. 糖酸化量において,セクション間で差が認められなかった理由として,糖代謝の運動初期は筋グリコーゲンが消費されるが,その後は血中グルコースが主要エネルギー源として利用されるため,筋肉での消費が少なく身体使用部位の影響が認められなかったと考える. 上記内容より,我々が考案した座位有酸素運動プログラムにおいて,脂肪を選択的に燃焼するには, 低強度(80bpm)の下肢を中心とした運動(Aセクション)が効率よく,糖を選択的に燃焼するには身体使用部位に関わらず高強度(160bpm)の運動を行うことが適切である.【理学療法学研究としての意義】 座位でのエクササイズは今までにいくつか考案され検証されている.しかし,糖・脂質代謝まで検証されているものはあまり見られない.肥満患者は糖尿病を合併している場合が多く,運動時の糖・脂質代謝の割合に着目して運動を処方していく必要がある.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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