理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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専門領域 口述
肩関節最大外旋・内旋位における肩甲上腕関節の接触域推定
田中 洋立花 孝二宮 裕樹駒井 正彦信原 克哉林 豊彦佐志 隆士
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キーワード: 肩甲上腕関節, 回旋, 接触域
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p. Ae0093

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抄録
【はじめに、目的】 これまで,肩甲上腕関節の接触域の推定は,外転や挙上に焦点を当てたものがほとんどであり,回旋に着目したものは少ない.また,これらの多くが屍体肩を用いた方法である.本研究では,MRIを用いて様々な挙上位での最大外旋・内旋位における肩甲上腕関節の接触域を推定すると同時に,臼蓋と上腕骨骨頭の形態を定量化することを目的とした.【方法】 計測にはopen-MR system(0.25T, Siemens, Germany)を用いた.計測肢位は仰臥位とし,肩甲骨面挙上45,90,135度での最大外旋(MER)・内旋位(MIR)とした.3次元骨形状モデルを作成するために,MRIの肩甲骨・上腕骨の骨領域を手動ディジタイズすることで,再構築を行った.ただし,これらの骨モデルは,関節軟骨を含むものとする.その後,解剖学的骨特徴点(烏口突起,肩峰角,臼蓋上結節,臼蓋下結節)を用いて,肩甲骨座標系を設定した.臼蓋と上腕骨骨頭の形態を定量化するために,臼蓋辺縁点列に対して楕円近似を行い長軸と短軸の長さ(長径,短径)を,上腕骨骨頭点列に対して球近似を行い上腕骨骨頭の半径を算出した.また,肩甲上腕関節の接触域を推定するために,臼蓋と上腕骨との最近骨間距離(LDGH)を算出し,LDGH+0.5[mm]の範囲を最近骨間範囲,LDGH+2 [mm]を接触域とし,その図心を接触域中心とした.そして,接触域を臼蓋と上腕骨にカラーマップ表示した.また,接触中心位置(CCA),上腕骨骨頭中心位置(CHH)は臼蓋中心位置からの距離として表し,臼蓋長軸・短軸の長さで規格化した.【倫理的配慮、説明と同意】 対象は,本研究の目的,撮影方法,撮影機器が身体に及ぼす影響についての説明を行い,本研究の趣旨に対して賛同を得られた肩関節疾患のない12名とした.【結果】 臼蓋長径は36.1±2.79[mm],臼蓋短径は26.1±2.38 [mm]であり,上腕骨頭の半径は21.8±1.54[mm]であった.臼蓋と上腕骨骨頭のLDGHは3.6±0.64[mm]となり,各肢位において統計学的有意差を認めなかった.CCAに関して.挙上90,135度MIRでは,上方16.8±8.56%,14.0±7.38%に位置した.また,挙上135度MERでは,CCAは下方4.4±11.9%に位置した.挙上90度ERでは,後方10.7±8.21%に位置した.CHHに関して.挙上45,90,135度MIRでは,前方6.4±5.50%,前方1.2±7.02%,後方1.0±6.53%に位置し,前方から後方へ移動する結果となった.また,挙上135度MERでは,下方7.0±6.92%に位置した.【考察】 臼蓋長径・短径に対して,上腕骨骨頭の直径が長いことから,骨性支持が少ない関節であることが考えられる.特に臼蓋短径に対して,上腕骨骨頭の直径は1.5倍以上あり,前後方向に対して構造的に不安定であると考えられる.前方は臼蓋の深さが浅いことが報告されており,特に前方は構造的に不安定であるといえる.CCAとCHHは各肢位において,上下・前後方向へ移動していた.もし,肩甲上腕関節が単なる球関節であるのであれば,CCAやCHHは不変であると考えられる.本研究より,肩甲上腕関節内では,臼蓋と上腕骨骨頭がそれぞれに位置を変えながら関節運動を行っていると考えられる.上腕骨骨頭にカラーマップした接触域において,挙上135度MER,MIRにおいてのみ,接触域が上腕骨骨頭上方部に表示され.それぞれが重なり合う部分がみられた.このことから,挙上135度では,肩関節は安定性に適応し,挙上45,90度では可動性に適応していることが推察された.【理学療法学研究としての意義】 関節内運動について定量的知見を得ることは,種々な関節疾患や機能障害進行の把握において重要であると同時に,より効果的な診断・治療法の確立につながると考えられる.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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