理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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専門領域 口述
フォワードランジを用いた下肢運動機能評価の確立
今泉 史生金井 章蒲原 元木下 由紀子四ノ宮 祐介村澤 実香河合 理江子上原 卓也吉井 公重江崎 雅彰
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p. Ae0092

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抄録
【目的】 スポーツ疾患を有する者に、足関節背屈可動域の低下がしばしば見受けられることがある。足関節背屈可動域の低下はスムーズな身体の前方移動を妨げるため、様々な代償動作を伴うことが考えられる。代償動作によっては、身体の一定の部位に力学的負荷が集中し、その結果スポーツ外傷・障害を発症すると考えられている。このようなスポーツ障害後のリハビリの方法の一つとして、フォワードランジ(以下,FL)が用いられている。FLは、エクササイズとして下肢の筋力強化や協調性トレーニングとしても用いられているが、足関節背屈可動域が低下している症例では代償動作や姿勢の異常が認められることから、運動機能評価の一つとしてその動作分析が用いられることもある。しかし、多くの施設では三次元動作解析装置のような高価な計測機器は設備されていないため、視覚的な評価が行われている場合が多く、その基準もセラピストの経験に頼るところが大きい。そのため、FLにおける視覚的な評価基準を確立することで、簡単にスクリーニングの実施が可能となり、障害を未然に防止することができると考えられる。そこで本研究は、FLを用いた下肢運動機能評価の確立を目的とした。【方法】 対象は、下肢運動機能に問題が無く、週1回以上レクリエーションレベル以上のスポーツを行っている健常者41名82肢(男性16名、女性25名、平均年齢17.7±3.2歳、平均身長162.6±8.3cm、平均体重57.1±8.6kg)とした。足関節背屈可動域は、Bennellらの方法に準じてリーチ計測器CK-101(酒井医療株式会社製)を用いて母趾‐壁距離を各3回計測し最大値を採用した。FLの計測は、踏み込み側の膝関節最大屈曲角度は90度とし、動作中の膝関節角度を電子角度計Data Link (バイオメトリクス社製)を用いて被験者にフィードバックした。頚部・体幹は中間位、両手は腰部、歩隔は身長の1割、足部は第二中足骨と前額面が垂直となるように指示した。ステップ幅は棘果長とし、速度はメトロノームを用いて2秒で前進、2秒で後退、踏み出し時の接地は踵部からとした。各被検者は測定前に充分練習した後、計測対象下肢を前方に踏み出すFLを連続して15回行い、7・8・9・10・11回目の足関節最大背屈時を解析対象とした。動作の計測には、三次元動作解析装置VICON-MX(VICON MOTION SYSTEMS社製)および床反力計OR6-7(AMTI社製)を用い、関節角度、関節モーメントを算出した。また、FLを三次元動作解析装置で計測すると同時にビデオカメラで撮影し、その映像から理学療法士が代償動作を視覚的に評価(以下,視覚的評価)した。そして、三次元動作解析装置による解析結果と、視覚的評価の結果を比較し、妥当性を検討した。尚、ビデオの視覚的評価は、動作の計測に関与していない理学療法士3名(検者A・理学療法士免許取得後10年、検者B・理学療法士免許取得後6、検者C・理学療法士免許取得後2年)とした。評価項目は、足関節背屈低下者のFLにおいて予想される代償動作として、股関節内外転・膝関節内外反・toe-in,out・骨盤左右傾斜・骨盤左右回旋・骨盤前後傾・胸郭左右傾斜・下腿左右傾斜・足部回内外の9項目とし、その有無について評価を行った。三次元動作解析装置と視覚的評価の妥当性については、Spearman の順位相関係数を用いて解析した。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究の実施にあたり被検者へは十分な説明をし、同意を得た上で行った。尚、本研究は、豊橋創造大学生命倫理委員会にて承認されている。【結果】 股関節内外転(検者A:r=0.21・p<0.05、検者B:r=0.29・p<0.01、検者C:r=0.30・p<0.01)、toe-in,out(検者A:r=0.50・p<0.0001、検者B:r=0.43・p<0.0001、検者C:r=0.28・p<0.01)、骨盤左右傾斜(検者B:r=0.95・p<0.0001)骨盤前後傾(検者A:r=0.33・p<0.01、検者B:r=0.32・p<0.01、検者C:r=0.28・p<0.01)、胸郭左右傾斜(検者B:r=0.97・p<0.0001、検者C:r=0.26・p<0.05)、下腿左右傾斜(検者A:r=0.36・p<0.001、検者B:r=0.25・p<0.05、検者C:r=0.51・p<0.0001)、に有意な正の相関が認められた。【考察】 今回、股関節内外転、toe-in,out、骨盤左右傾斜、骨盤前後傾、胸郭左右傾斜、下腿左右傾斜では、視覚的評価と三次元動作解析装置の結果において、有意な相関が認められたことから、概ね妥当性が有ると考えられた。これは、体幹、骨盤、大腿、下腿という大きな体節は、視覚的にもその傾斜の評価が容易であることによると考えられた。【理学療法学研究としての意義】 FLにおける下肢運動機能評価を確立することにより、臨床場面において容易にスクリーニングが可能となり、障害を未然に防止できると考えられる。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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