理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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専門領域 口述
頚髄損傷者の自動車運転における動作解析
─右カーブと左カーブの比較─
廣瀬 浩昭武田 功
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p. Ae0096

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抄録
【はじめに、目的】 車いすを移動手段とする頚髄損傷者にとって、自動車運転は社会生活の活動範囲を拡大させる主な手段である。しかし、高木らは市販の運転補助装置を使用する運転環境では、スムーズな操作が困難であると述べている(2004)。本研究では、頚髄損傷者を対象として運転動作における身体負荷を軽減させる運転環境を開発する前段階として、自動車運転中の頭部位置変化と僧帽筋の筋電図を解析した。【方法】 対象は、頚髄損傷により上下肢障害をもつ男性5名とした。内訳は、C5残存1名、C6残存4名、平均年齢は39.0歳(27~58歳)、全例日常生活の移動手段として手動車いすを使用していた。全例が運転免許を有し、運転経験年数は平均16.6年(8~35年)であった。実験に使用した車両は、各被験者所有の自動車で市販の運転補助装置を使用した。具体的には、右手でステアリング操作(手掌型1名、ノブ型1名)、左手でアクセル・ブレーキ操作を行った。他の自動車が進入しない教習コースに右カーブと左カーブの2通りのコースを設定し、健常者が安全に運転操作できる速度条件(30km/h)にて十分に走行練習を行わせた。運転の動作解析には、車中に汎用ビデオカメラを2方向で計2台設置し、被験者の左耳孔に球状マーカーを装着して走行中に記録した。解析には、3次元動作解析システムを使用し、サンプリング周波数30Hz、1フレーム毎にデジタイズを行い、時間の正規化処理の後、時系列における左右方向と前後方向の単位時間あたりの頭部位置変化を算出した。また、LED式同期装置にて筋電計を時間同期させ、左右僧帽筋から表面電極を用いて双極導出法によって筋電図を導出・記録した。筋電計のサンプリング周波数は1,000Hzとし、オフラインにて筋電図解析を行った。筋電図データはRoot Mean Square処理を行い、時間の正規化処理後に単位時間あたりの筋電図積分値を算出した。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には研究の趣旨と概要、実験の危険性と注意点、個人情報の取り扱い等について十分な説明を行い、書面にて同意を得た。【結果】 頭部位置変化は、右カーブで左右方向23.2mm、前後方向21.6mm、左カーブで左右方向36.5mm、前後方向62.9mmであった。右カーブと比較して左カーブでの頭部位置変化は大きい傾向を示した。僧帽筋の筋電図は、右カーブと比較して左カーブで左右とも高値を示す傾向があり、左僧帽筋では有意差が認められた(p<0.01)。【考察】 本研究において、右カーブと比較して左カーブにおいて、運転者の頭部が大きく移動し、僧帽筋の筋電図積分値は高値を示す傾向があった。頚髄損傷者が運転補助装置を使用する運転環境では、右手でステアリング操作、左手でアクセル・ブレーキ操作を行う。左カーブでは、体幹に右向きへの遠心力が加わっている状態で左へハンドルをきらなければならず、右体幹上部がシートから離れて座位は不安定になる。頚髄損傷者では下肢・体幹筋群の麻痺により座位の動的安定性が低下するため、座位の安定性を補うために上肢を強く働かせている可能性が示唆された。今後、コース区分毎に解析し、不安定になる時間要素について検討し、安定性を補う補助機構を検討する必要がある。【理学療法学研究としての意義】 頚髄損傷者の自動車運転における身体負荷を分析して、身体負荷を軽減させる方略を検討することは、頚髄損傷者が自動車運転を行う際の安全性・快適性の向上に寄与すると考えられる。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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